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episode.106 半年の爪痕
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〜恋side〜
2月18日
「はぁ……」
"恋、なんでため息ついてるの?"
「え、なんでため息ついてるってわかったの?」
"僕の感覚なめないでよ?耳が聞こえないから他の感覚が冴えてるみたいだし。"
「そうなんだ……」
"で、なんでため息?"
恋は朝から千秋の家にいた。
現在時刻は16時。もうずっと千秋の家にいる。
「……恋するって辛いなって。」
"……また、急だね。"
「今まで、こんなこと知らなかった。胸の痛みとか、ドキドキとか……き、す、したいとか……」
恋は最後の方は声が小さく、耳を真っ赤にして、膝を抱えながらそう言った。
"恋って、可愛いよね。"
「え、どこ、らへんが?」
"その辺。今耳真っ赤にして膝抱えてるとことか。"
「そっ、か……赤津さんから見ても、可愛いかな……?」
「んぶふっ!!」
千秋は飲んでいた紅茶を吹き出した。
「な、なに……」
"……僕は話しか聞いてないから、よくわからないけど、でも、昔の恋は、そんな風に思わなかったんじゃないかなって。"
千秋に言われて、恋はハッとした。
いつの間にか自分が変化していることに気づいていなかった。
好きとか、そんな感情を抱くようになったのは一体なぜだろうか?
そんな疑問が頭をよぎった時、ズキンと頭が割れるように痛くなった。
「痛いっ……」
"恋?"
千秋が手話ではなく、唇の動きで恋を呼ぶ。
「ち、あき……あ、たまが……割れそうっ……」
「っあ……あ……」
千秋が声とも言えない音を漏らして、恋を心配そうに覗き込む。
恋は息ができなくなり、座っていたソファから崩れ落ちるようにして床に倒れこんだ。
ひゅーひゅーと喉がなり、苦しくなった恋は胸元をぎゅっと掴む。
「……っあ……う……」
千秋がまた、必死に声を出そうとしているのか、呻くような声を漏らして、恋を支える。
千秋はスマホを手に取り、誰かに電話をかけ始めた。
「あ……ち、あきっ……」
恋は千秋の腕にしがみつくようにしてなんとか体を起こしていた。
「っ……う、あ……」
相手が出たのだろうか、千秋は必死に何かを伝えようとして、声を出そうとしている。
(痛い……頭が、なんで、こんなに……?痛い……!)
恋の頭の中に、記憶の波が押し寄せる。
旅行に行ったこと。
そこで初めてのキスをしたこと。
初めてのセックスをしたこと。
毎日一緒に過ごしたこと。
そのあとも何度か体を重ねたこと。
でも、誰とだろうか。
「あ……かつさん……」
意識を手放す直前の恋の頭の中によぎったのは、赤津の顔だった。
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