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episode.149 ヒロと紘
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※episodeの途中で日付が変わりますのでご注意ください。
〜恋side〜
楽しい時間はすぐに終わるのが定石で、恋たちは帰りの飛行機の中にいた。
「すごい……ローデンスでもらった酔い止め、効き目がすごい。」
「全然酔ってないねー!」
呟いた恋に明希がそう言って笑う。
「よかった。行きは結構辛そうだったからな。」
そう言って恋の頭を撫でてくる赤津。
恋は昨日の朝にラズたちと話したことを思い出していた。
気持ちは伝えたほうがいい。
そう言われ、恋は迷っていた。
一度は伝えようとしたのだ。
裁判の後に。
あの時なら言える気がしていた。
だが今はどうか。
赤津のそばには小雪がいる。
しかもその小雪とローデンスに行くかもしれないなどという話もある。
そんな時に、話を切り出す勇気が、恋にはなかった。
ふと、千秋はどうするのだろう、と思い、千秋の方を見やる。
千秋は紘のことを見て、やはり何か考えているようだった。
結局飛行機の中では答えの出ないまま、それぞれの家に帰り着いた。
*
〜千秋side〜
7月5日
旅行から帰国して、ヒロは少し仕事が片付いたらしく、今日は家にいた。
「千秋、何食べる?」
"ヒロさんが料理作ってくれるんですか?"
「うん。あ、千秋オムライス好きだったよね。」
どうして知っているのだろう。
千秋はそう思った。
オムライスが好きなのを知っているのは、聖川の親戚と、紘だけのはずだった。
千秋は疑問に思いながらもそれ以上は考えなかった。
そしてヒロの作ったオムライスを食べ、なんとなく眠くなってきた千秋は寝室に向かった。
この日、千秋はなぜか、いつもは全く触らない、ヒロの机に目がいった。
それはただの興味だった。
ヒロの仕事の書類が入っているのだろうと、そう思って、引き出しを開けたのだ。
まるで神様のお告げか何かのように、惹きつけられたように引き出しを開けた。
そしてそこに入っていたのは
(僕の……僕の母さんの、指輪……!)
あの日、確かに紘に渡した指輪だった。
ヒロの机の引き出しに、紘にあげたはずの指輪が入っている。
どうして。一体どうして。
「ひ、ろ……さん……」
考えれば考えるほど、一つの結論しか思い浮かばなかった。
自分が今まで
ヒロだと思っていたのは
紘。
烏沢紘、本人なのだと。
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