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〜恋side〜
「あ、の…3005号室の、藍井小雪さん、と、一緒に泊まりたいんですけど…」
ホテルに着いた恋は、フロントマンにそう声をかけた。
泣いたせいで目は真っ赤に腫れ、雪で濡れた恋を見たフロントマンは、すぐに小雪の部屋に連絡を入れてくれた。
「藍井さまの許可が頂けましたので、どうぞ。」
フロントマンは優しい笑顔で恋をエレベーターの方に案内してくれた。
そのままエレベーターに乗り込み、最上階へ向かう。
そして、3005と書かれた部屋の前に立ってすぐ、内側から扉が開いた。
「恋さん!傘は?こんなに濡れて…とりあえず中入って。ね?」
「は、いっ…」
小雪の顔を見たら、止まっていた涙がまた溢れてきて、視界が滲む。
「とりあえず濡れた服脱いで。バスローブついてるからシャワー浴びておいで。部屋ももう少し温めておくから…」
恋は小雪に、ぎゅっと抱きついた。
服が濡れていて、小雪に迷惑だろうと、そう思いながらも、そうせずにいられなかった。
誰かに、抱きしめてもらいたかった。
胸が苦しくて、寒くてたまらなかった。
「…恋さん…」
「ごめ、なさい…め、わく…」
「迷惑じゃないよ。」
小雪は背中に手を回して、優しく撫でてくれた。
「何か、辛いことがあったんだよね。大丈夫。迷惑なんかじゃないから。僕でいいならいくらでも話聞くし、ぎゅってしてあげる。」
小雪は、まるでお母さんのような優しい口調で、恋を受け入れてくれた。
「でもこのままだと風邪ひいちゃう!先にシャワー!わかった?」
ニコリと笑ってそう言う小雪に、恋はコク、と頷いて、シャワールームに向かった。
温かいシャワーを頭から浴びて、体がだんだんと温まって行く。
体が温まると、余計に寂しさを実感して、恋はさっさとシャワールームから出た。
「小雪さん…」
「あれ、もう出たの?…ってもう、ひどい顔だなぁ…可愛い顔が台無し。」
小雪は恋の腫れた目元をそっと触る。
頬に触れられた手が温かくて、また涙がこぼれた。
「あららら!また泣いちゃって…もー、大丈夫だよ。よしよし。」
ベットに座らされて、抱きしめながら頭を撫でられる。
「小雪さん、おか、さん、みたいっ…」
「あはは!僕がお母さん?仕方ないなー。今日だけ恋さんのお母さんになってあげるよ。」
小雪はからかうようにそう言ってくれて、恋はその優しさに甘えることにした。
「それで、何があったの?お母さんに話してごらんなさい!」
「…っ…にげて、きちゃったんです…」
「逃げた?」
「りゅ、さんから…」
「なんで?」
恋は必死に言葉を紡いで、さっき起きたことを話した。
「え?琉さんの元カノってこと?琉さんって付き合ったことないんじゃ…」
琉の母、眞弓からも、琉はそう言った経験はないと聞いていた。
だが、あの雰囲気と、琉のあの態度。
間違いなく、過去にそういった関係だったのだろう。
「それはともかく、琉さん追いかけてこなかったの?」
そう聞かれて、コク、と頷く。
「なにそれー!もう!あの人最近本当にひどいな!恋さんが優しいからって甘えすぎ!!」
自分のことのようにプンプンと怒る小雪。
真剣に恋のことを考えてくれているのだとよくわかった。
「この前の浮気疑惑もそうだし、今回は何?元カノと縁が切れてませんでしたって?!ドラマじゃないんだから!どれだけ恋さんが傷ついてるかわかってないんだよ、本当にもう!」
小雪はどうやら、少し前に恋と琉が喧嘩したことまで知っているようだった。
「僕が身を引いた意味はなんなのさ!」
「…ごめんなさい…」
「いやいや!恋さんが謝ることじゃないから!まあ恋さんさんがいなくても僕は琉さんとは恋人になれなかっただろうし、僕はもう新しい恋に進むって決めたからそれはよくて…って違う。琉さん最低!」
「でも…おれ、にげちゃった、から…」
「いや逃げたくもなるよ!婚姻届出すのと、その女と話すの天秤にかけて迷うとか何?!そこは天秤にかけるまでもないでしょ?!」
小雪はプンプンと怒りながらも、恋の手を優しく握ってくれていて、恋はその手をぎゅう、っと握り返した。
「本当許せない!どんな事情があれ、酷すぎる!一発殴ってやろうかあのヘタレ!!」
小雪の毒舌に、少々面食らった恋だが、落ち込んだ気分は全く浮上してこない。
「よーし!腹いせだ。全部琉さん宛てで領収書切って、美味しいもん食べまくろ!明希ちゃんたちも呼んでさ!」
「でも…」
明希と千秋は忙しいことを知っている。
それに小雪だって、日本に帰ってきたからには何か理由があるのだろう。
「あ、ちなみに僕は休暇で帰ってきただけだからね。恋さんとデートしちゃうよー!明希ちゃんと千秋ちゃんだって、恋さんが傷ついてるのに放っておく子たちじゃないでしょ。それに、相談してくれない方が、友達は嫌だと思うよ?」
そう言われても、恋はまだ、なんとなく申し訳なかった。
「恋さんはさ、2人が苦しんでる時、助けてあげたいって思わない?」
「おもう…」
「それは2人も一緒だよ。ほら、連絡してみよ?」
小雪がそう言って微笑む。
恋はその笑顔を見て、コク、と頷き、明希と千秋に連絡を入れた。
2人からはすぐに返事が返ってきて、すぐにこちらに来ると言われた。
「きてくれる、って…」
「ほらねー?4人で楽しんじゃおうっ!」
小雪に明るくそう言われて、恋もほんの少し、笑顔を取り戻した。
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