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1.中退の危機2
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苛立ちに任せて、教員室のドアを後ろ手で乱暴に閉める。中で担任がまだ何か喚いていたけど、もうこれ以上聞く気にはなれなかった。
『高専に居られなくなったときのこと、考えておけよ』
そのときが来てしまったという現実を受け止めるだけで精一杯だった。
学年末試験の結果が散々だった俺は、このままでは4年に進級できないらしい。再試に合格すればなんとかなるらしいが、今の俺にはそれすら無謀だ。
4年に進級させてもらえないーーそれは俺にとって退学を意味している。俺はすでに留年生で、高専3年でありながら、実年齢は19歳だ。同じ学年を2回留年することは許されないから、進級できないとしたら、この大和工業高専を去るしかない。
先のことなんて全く考えてなかった。ただここを卒業して、適当に就職しようとだけ思っていた。しかし今は、その漠然としたイメージすら崩れ去ろうとしている。
いつもの帰りの電車に揺られながら、俺はこれからのことをいつになく真剣に考えた。
勉強なんか糞食らえだが、やはり中退はしたくない。なんとか再試には合格して、4年に上がらなければならない。でも、今の学力からどうやって再試に受かるんだ?
今更教員に頭を下げて単位をもらうのか? そんなんで単位が出るのは普段の行いが教員に気に入られてる奴らだけだし、そんな奴らはまず赤点なんて取らない。
だったら学生はどうだ。
ただでさえ怖がられる見た目をしている俺は、たった1人の留年生ということもあり、クラスからは完全に浮いている。クラスメイトの奴らに助けを求めるなんてことはしたくもないし、そもそも不可能だ。俺に勉強を教えようとする奴なんて…………
いた。渡良瀬なら、頼めるかもしれない。
渡良瀬はクラス内でトップの成績を取り続けているガリ勉野郎だ。休み時間はマジで勉強しかしてないし、体育の時間は珍プレー連発するし、変な喋り方するし、とにかく生理的に気に入らない奴だった。
何より問題なのは、渡良瀬が俺に恋愛感情を持っていたことだ。以前はしょっちゅう話しかけられて鬱陶しかったが、渡良瀬が告白してきたときに罵詈雑言を並べ立てて振ってやったら、それ以降はあまり絡んでこなくなった。おかげで最近の俺の高専生活は、学年末試験が返却されるまでは平穏そのものだった。
しかし、渡良瀬に勉強を教わることは、俺の心の平穏を思い切りぶち壊す行為だ。渡良瀬が俺のことを諦めたのならまだいい。だがそうでなかったとき、俺はどんな目に遭うのだろうか。
進級か、平穏か。少しの間迷ってしまったが、 やはり背に腹は代えられない。
明日の放課後、渡良瀬に話しかけてみることにしよう。
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