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ちぎり、ちぎり(10/21)
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涙が枯れた後、己の心の内を支配したのは憎悪の念。
憎い……憎い、ヒトの子が。
達希が、憎い。
どす黒い感情が、我の妖狐の血を騒ぎたてる。
決して赦さぬ。目の前にいたら噛み殺していたものを。
……噛み殺す?
ふと、以前達希と交わした契りを思い出した。
"
「小僧……、お前と一緒に居よう」
「白…!」
「だが、一つ契らせてもらおう。
お前が元服の年頃になった後、日没までに山を下りなかったその時はーー我はお前を喰らう。……よいな?」
「うん!"げんぷく"って知らないけど、ずっと白と一緒に居れるなら、いいよ!約束!」
「……あぁ、確かに契ったぞ」
"
そうだ……確かに我らはそう契った。
ヒトの子を喰い殺す。
すれば、我の呪いは解かれ、ヒトへと生まれ変わることが出来る。
裏切られるこの辛い気持ちを、もう味わずに済む……。
正直誰でも構わない……我の姿が見える、ヒトの子なら。
だが、それでは気が済まぬ。
達希……達希でなくては。あやつを食い殺したい。
あぁ…こんな事になるのなら、あのとき喰らっておけばよかった。
初めて会ったとき、躊躇せず殺しておくべきだった…あの小僧を。
偽りの思い出、太陽のようなあの笑顔……全て汚らわしい。
信じる心?馬鹿馬鹿しい。
そんなもの、この世に存在などしない。
三百年経て、ようやく答えが出た。
ヒトの子は、必ず我を裏切る。
故に、殺そう……幸せになるために。
我を恨むな、ヒトの子よ。
共に生きるという契りを千切ったのは、達希……お前だ。
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