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プライドvsプライド -14
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「これは何だ」
「いや…、その、、本当に覚えが…」
「あぁん?それでやり過ごせると
思ってんのかクソガキ」
保健室に入ったらあの夢で見たような
アツアツタイムが待っているんだと
少しでも期待した俺が馬鹿だった。
先程から何を尋問されているかというと…
「だから何で飴と間違えてコンドームを
出すんだっつってんだよ」
「だから知らねーって!」
そう、先程飴だと思って渡したあの箱は、
なんとコンドームの箱だったのだ。
しかも、すごい極薄のやつ。
これがもし他の奴だったなら、
ジョークで済ませられるのだが、
相手が達となると色々と、かなり、
すごく、とてつもなく、超面倒だ。
「なあ、俺にどんだけ恨みがあったら
こんな箱出してくんだよ」
「だーかーらー俺のじゃないって」
「お前のじゃなかったら誰のだよ」
「さあ?お前のじゃね?」
「お前いつからそんな馬鹿みてーなこと
言うようになったんだよ」
「あ、本当は俺と話したくて話したくて
仕方なくて、思わずこっそり鞄に入れて、
わざとこの展開に持ってきましたー、って
認めたらおしゃべりに付き合ってやるぜ?」
「…小学生か、小学生なのかお前は。
第一それなら何でお前が飴を持ってきたって
言い出したんだよ、おかしいだろ、
予言者か俺は。あ、何、お前こそ
本当は話したくて仕方ないから
思わずこんな悪戯しちゃったわけ?」
「はあぁぁ?何が寂しくててめぇなんかと
話さなきゃいけねーんだよ。
それならアリと話すねアリと」
「アリと話せるんだー、へー、
すげーよ、すげえ、スゲー気持ち悪い。
……つーか、お前なんか、って言うけどさ
一体いつから俺のことそんな風に
敵対視するようになったんだよ」
俺は達を言い負かそうと必死になり、
小学生レベルの攻撃を繰り返した。
他の相手ならもっとマトモなことが
言えんのに、相手がコレだとどうも
調子狂うっつーか…。
同時にその馬鹿みたいな口喧嘩を
どこかで楽しんでいる自分がいた。
…いや、違う、俺は楽しんでなんかいない。
俺は達なんか嫌いだ、大っ嫌いだ。
だからコイツを踏み潰してやるんだ。
そう思っていたら、突然達は
真面目な表情になり、俺が一番
触れて欲しくないことを尋ね始めた。
俺たちは喧嘩をしたわけでもない。
ただ、俺の勝手で離れたのだ。
だから俺はその身勝手を押し通すために
達を心から嫌いにならなければいけない。
それなのにどうして俺は、
その嫌いなはずの相手と二人きりで
しかも授業中に保健室で話してんだよ…。
でも少なからず達にも同じような
ところがあると思っていた。
達も何か理由があって、俺に対して
距離を置くようになった気がした。
だから達が、どうして敵対視
するようになったのかと聞いてくるなんて
思いもよらなかったんだ。
俺は返答に困った。
今更真実を告白するつもりも無いし、
嫌いな達にだからこそ、自分の中の
汚い感情やエゴを晒すようなことは
絶対に避けたかった。
そしてただ、
チャイムが鳴る時間まで、時が
100倍速で進めば良いのに、と願った。
「ごめん、やっぱ今のなし」
俺が言葉を詰まらせていると、
達がそう言った。
内心、良かったと、そう思った。
その感情しかなかった。
でも、どうして取り消したんだ…?
達の表情はほとんど無に近くて
何も読み取ることは出来なかった。
すると達は突然立ち上がり
「じゃあな」
と保健室を出て行こうとする。
いやいやいや待て待て待て、
流石にそれでは俺が一方的に振り回されて
終わりじゃねぇか。
「おい、待てよ」
咄嗟に声をかける。
達は背中を向けたまま足を止めた。
「一つ聞いていいか。
その…なんでお前、コンドーム出しただけで
そんな怒ってんの?」
「なっ…」
俺は純粋に気になっていたことを尋ねた。
俺は勿論、達だって女には困っていない。
だからこんなものが出て来ただけで
あれだけ動揺するのはどう考えても
おかしかったのだ。
俺が問いかけると達は少しだけ
肩をビクッと震わせて、
また動揺したらしかった。
「…なんでお前にそんなこと
教えないといけねぇの?」
胸を突き刺すような声にドキッとする。
達の声は突然冷たく、低くなった。
先程まで、ほんの少しだけ
時間が戻ったような気がした。
あの頃の二人に一瞬だけ
戻ったような気がしたのだ。
けれど、たった数秒の間に達は
元の冷たい達に戻っていた。
だから俺もつい無愛想になる。
「あぁそう、勝手にしろよ。
別にそんなに聞きたかねぇし」
やっぱり達なんて嫌いだ。
宇宙で一番嫌いだ。
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