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聞きたいこと -22
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窓の外で響く、コンクリートを打ち付ける雨音が
激しさを増す。達はコーヒーを飲み終えると、
聞こえるか聞こえないかという位の声で
ご馳走さま、と呟いた。
俺は一つ軽めの深呼吸をして、先程、この機会に
聞いてしまおうと決めたことを口に出し始めた。
「なあ、達」
「…ン」
「…お前、俺に聞いたよな。どうしてお前のこと
避けるようになったのかって」
「……」
「……」
「…それは「逆にお前に聞きたい」
「……あ?」
「どうして俺の前からいなくなったんだ」
達の本当の心がどうしても知りたくて、
俺は正面から彼の瞳を覗き込んだ。
本当は目を合わせるなんて恥ずかしかったが、
それだけ俺は真剣だった。
「…」
長い沈黙。
最初達は、俺に目を合わせたまま、
いや、目はあっているが、頭の中がいっぱいで
俺のことはちゃんと見えていなかったと思う、
微動だにせずぼーっとしていた。
やがて何か言いたげに息を詰まらせては
また黙り、を数度繰り返した。
俺にはどんな答えが返ってくるのか、
全く予想もできなかった。
この答え次第では、俺の人生、
大きく変わってしまうのかもしれない。
「悪ィ、今それを教えるわけにはいかねえんだ」
それが達の出した、この時の結論だった。
「でも…2年の間に必ずお前に教える。
だから、その時まで待っててくれ」
この言葉の意味を知るのは、
本当にずっと先のことだった。
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