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Ⅻ
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織部の親父に言われた事が、頭の中で繰り返される。
あんな……薫が間違ってるみたいな事言われたが、本当は俺が間違えているのかもしれない。
織部に似たあの姿から離れる事が出来なくて。
失くした「運命」の影を追いすぎて。
二度と会えない面影を手放せなかっただけなのかもしれない。
離れなくては。どちらが間違っていようと、このままじゃいけない。
「オメガ」に対する目は厳しいのだから。
その日から、俺はバイトのシフトを増やした。
早く金を稼いで出て行かなくては。
「雪人、雪人?」
「……薫……」
色々考えているからか、増やしたバイトのせいか。
疲れきって帰宅するなり寝てしまう事が増えた。
今みたいに、帰って来た薫に起こされて自分が寝ていた事に気付く。
「最近こんな事多いよ、何かあった?」
「ねえよ」
「教えて、心配なんだよ」
「何もねえって」
優しくするな。その顔で、優しくしないで。
あんたは「違う」。あんたは、織部じゃない。
離れられなくなる前に、離れなくてはいけないんだ。
「まさか、ヒートじゃないのかい?」
ヒート。何気ない薫の言葉は、俺に一瞬で恐怖を思い出させた。
何も分からなくなっておかしくなるほど……熱くて、誰かを惑わす悪夢を。
「雪人?」
何も言わなくなった俺に、薫が異変を感じて呼びかける。
薫の声が遠く聞こえる。ヒート?嫌だ、二度とあんな感覚は。
煩わしい保健の先生(他人)の熱い吐息、本当に求めた織部の液晶越しの笑顔と声。
全てが悪夢でしかなかった。
「……雪人、落ち着いて。僕が悪かった。もう何も聞かないから」
薫が背中を撫でてくれたが、それも煩わしいと思ってしまった。
織部の声が聴きたい……。
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