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物品販売
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部長の予想通り、今年の出品物は売れ行きが良かった。
昼になると西村先輩とアキラ先輩が昼食のお弁当5人分を持って駆けつけてくれた。
朝方はそれほど混んでは居なかったが、昼を迎える頃には僕らのブース前に長蛇の列が並ぶ。
僕らは交代交代で休憩をとって、食事をとった。
お台場といえばフジテレビ。
そのテレビ局が近いということもあり、何度かカメラを向けられ取材をされたが部長が対処してくれた。
販売時、一人一人と写真を撮ったり、サインやメッセージを写真集に書き入れていく。
それはやっぱり、本屋で買うよりも新鮮で、撮影者と購入者が近い感じがする。
僕はそんな距離が好きだった。
やっぱり、例年通りボーイズラブの写真集や青春画像など購入していくのは若い女性が多かったが、少数ではあるが長年応援してくれている年配の卒業生の方も来てくれた。
「桜ヶ丘高は昔から変わらないねえ」
年配の卒業生の方が、僕らに声をかけてきた。
彼は毎年ここに買いに来てくれる。
手にしたのは、青春と高校の風景を撮影した写真集の二冊。
「懐かしいなあ」
感慨に耽っている。
それを撮影した西村部長は嬉しそうに卒業生の方と話をしていた。
また、他にもアキラ先輩の写真集を求めて来た方々が多くいた。
アキラ先輩は業界で名の知れた存在。
彼の撮った桜は、あっと息を呑むほどに色鮮やかで、写真の中で今尚息をしている。
「これは上野の夜桜ってこんなに綺麗なんですね」
しかし、そういう感想に彼はいつも複雑な気持ちになるという。
写真が一人歩きしている。
本当にその場に行ったとしても、奇跡の瞬間はほとんど見れないのだから、と。
写真。
この世界には僕の知らないことがまだまだ多くある。
僕だって。
いつかはきっと、僕にしか撮れない写真を撮りたい。
そう思えた。
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