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第3話
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-第3話-
「見ろよ奏夜!
超豪華なんだけどここの旅館!」
「こんな企画初めてだもんね」
「小鳥遊先輩は1人だけ反対だったんですよね..?....小鳥遊先輩?」
「んぁ..?あー、まぁ。もういい、
来たからには今度は帰るのが面倒臭い。」
メンバーに笑われながら、
生徒会長..、糸魚川先輩を"奏夜"と呼ぶ先輩に違和感を感じて、
その違和感に首を傾げた。
「"小鳥遊"、行こう?」
急に目の前に差し出された手とその本人に驚いて目を見開いてしまう。
先輩は、人前で俺を名前で呼ばない。
「1人で行けます。」
無視した糸魚川先輩の手が今度は俺の肩に回って来て少し緊張する。
幾ら嫌っていても、床次高校1のイケメンでありアイドルであり生徒会長である。緊張しないわけではない。
少し顔が熱くなった気がして目を反らすと、覗き込んでいた先輩の顔が緩んで、耳元で囁かれる。
「かわいい...」
思いっきり肩を揺らしてしまった俺を見た副生徒会長が、奏夜何言ったんだよー!と茶化しに入って解放される。
何でもない、早く入ろうといつもの笑顔でそう流した糸魚川先輩の声を背に、顔を背けたままの俺の心臓は何時もより速くなっていた。
出来るだけ部屋を広く使いたいとの要望が多かった為、2人1部屋で4部屋借りた。
勿論俺のペアは糸魚川先輩である。
強制で。
荷物を置きに1度旅館に来たのだが、
旅館が広すぎて、旅館内を探検する
と言う小学生並みの企画が始まった。
が、メンバー全員の予想通り俺は行かないと即答して部屋に戻った。
その後、5分後くらいに部屋の引き戸の開く音がしてその方を見ると、
探検をしに行った筈の糸魚川先輩が
戻って来た。
少しだけ嬉しいと思ってしまったのは
知らないふりをする。
そして、糸魚川先輩なら、と一瞬でも思ってしまった自分に腹を立てた。
「行かなかったんですか?」
「んー、行っても良かったけど..、
やっぱ望が良いなーって。」
「っ...、」
何時もなら真顔で流す筈の台詞を
今日は直ぐに思いつかずに焦る。
旅館に入る前の囁きがまだ耳に残っているだけだ。
熱い顔と速い鼓動を無視して、へぇ、とだけ言って先輩から顔を反らすと、先輩が問いかけて来る。
「えっ...と、もしかして..
照れてる....?」
「..寝言は..寝て言って下さい...。」
「そういうのは目を見て言うものだと思うけどなー..?.......こっち見て、」
肩に手を置かれて肩が揺れる。
部屋の中の空気が妙に甘ったるくて
落ち着かない。
置かれた手が俺の肩を引いて、
驚いた拍子に先輩と目が合ってしまう。更に顔が熱くなるのが自分でも分かった。先刻よりも速くなった鼓動に気付かずに、俺は先輩から目を離せずに固まってしまった。
「せ....んぱ.....」
「...そういう反応されると..、
抑え効かなくなるんだけど....。」
先輩の顔は、もう我慢の限界と言った表情をしていて、肩の手の力が、少し強くなった。
そして、気付いた時には、
先輩に抱き締められていた。
「2年」
「.....は..?」
「好きになってから....
2年目と4ヶ月....。」
「..っ」
「やっと...
ちょっと進展したかなぁ..」
心臓が締め付けられる。
苦しい。胸が痛い。
力が、入らない。
抵抗、出来ない。
俺は、先輩の背中に手を回す方法を、
まだ知らなかった。
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