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1日目②
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文化祭も終わる頃、僕は自分の教室に向かっていた。
僕たちのクラスの展示物はプラネタリウム
何人かプラネタリウムの映写機を持ってる人がいて、なかなかのものに仕上がった。(手抜きだけど)
ただ展示といっても、クラスの何人かで交代で管理人をやっている。
夕方は僕と、陸上部の2人が当番だった。
「あーこんな終わり側に当番なんてだりーなー」
「しょうがないだろじゃんけんで負けたんだから」
僕と一緒に当番をやっているのはあまり話したことがない2人だった。
片方は不真面目そうだけど、何だかんだ言ってまじめに受付をしていた。
まぁこんな時間に人なんかほとんど来ないけど、現に僕らが受付を交代してから、他校の生徒が3人きただけでそれ以外は誰もこない。
その生徒ももう帰ってしまった。
「え!やべぇ!今から校庭でビンゴ大会始まるって!」
彼は携帯を見ながら興奮気味に立ち上がると今にも走り出しそうだった。
「だめだ。俺たちは仕事中だろ」
この2人はいつも一緒にいる。
不真面目なこの人を抑えられるのは、真面目な彼しかいないだろうと、コンビみたいな感じでよばれることも多い
校庭に行くという提案を却下され、渋々座り直すが、まだビンゴ大会に出場したいのか、そわそわ落ち着きがなかった。
まぁどうせ人ももう来ないだろうしな
『行ってきていいよ』
「え?!」
『どうせ人も来ないし』
「本当に?!」
「いやだめだろ」
『大丈夫だから2人で行ってきなよ』
1人だけビンゴ大会に行って2人きりにされるのも気まずいし、行くなら2人で行って欲しい。
同じような会話が2.3度続き、最後は根負けしてビンゴ大会に2人で歩いて行った。
本当に仲良いよな。
どこに行くのも2人一緒だ。
1人になった僕は、1日の疲れが出たのか眠くなって目を閉じた。
このまま誰も来ないし寝てしまおうか
そう思ったとき
「職務怠慢」
その声にハッとして目を開けると、店員の服から制服に着替えた真壁が目の前に立っていた。
『真壁、何してるの?』
「あんたのクラスの展示見にきた」
『ああ、どうぞただ今貸切です』
僕が冗談めかして言うと、真壁は僕のことをじっと見て
笑顔を作った
「なら一緒に見ようぜ、誰も来ないだろ」
確かに、周辺に人の姿も見えなければ気配すらない。
まぁ、ちょっとくらいならいいか、、、、
そう思い、真壁に続いて教室に入った。
教室の中は真っ暗で、無数の星の数だけがキラキラ光っていた。
『綺麗、、、』
思わずそう呟くと、真壁は一瞬僕の方を見ると、すぐ目をそらし、僕から離れた。
多分深い意味はないだろう。
真壁と仲良くなって、そんなに気難しいやつじゃないとわかってきた。
初めは本当に嫌なやつだと思ったけど、まさかこんなに仲良くなるなんて思わなかったな、、、、
「なんだよ、人のことじっと見て」
『いや、まさか真壁とこんなに仲良くなるなんてと思ってさ』
僕は真壁に近づきながら笑った
「まぁ初めは最悪だったけどな」
『確かに(笑)』
僕と真壁は、少し前のことを思い出しながら2人でクスクスと笑った。
「あの時のことは忘れていいよ」
『え?』
「あの時俺の部屋であったことも、あの時俺が言ったことも」
あの時言ったこと、、、
【、、、俺のこと、、、利用していいよ】
あの時、真壁は僕にそう言ってキスをした。
僕は初めて礼央に彼女ができてボロボロになっていて、差し出された手にすがりついて真壁と関係を持った。
でも、あれから真壁とは何もない。
僕達2人はどんな関係なんだろうと思うこともあったし、あの言葉を忘れたわけじゃない。
かと言って、答えを出そうとはしていない。
忘れていい
というのは、、、無かったことにしようという意味なんだろうか。
「もともとそんな深い意味で言ってないし、その場のノリで言っただけだから」
ノリで言っただけ
そうだよな。もともと真壁は遊び人だって噂だったし、思いつきで言っただけなんだろう。
僕だって、真壁の言葉を有耶無耶にしようとしたじゃないか。
それなのに真壁の言葉に少し胸が痛むのは
何故だろう。
「なんだよその顔、怒ったの?」
『怒ってないよ。ただ、、、』
「まぁそりゃ怒るよな。いきなりあんなことしたし」
真壁が気まずそうに笑った。
「、、、、、、後悔してるよ、、、、もっと時間かけて伝えればよかったって、、、」
『え?』
「真面目な恋愛したことがないから伝え方がわからなくてさ」
こんなにモテるのに、真壁の発言に少し驚いた。
真壁の顔を見ると、少し切ないような悔しいような顔をしていた。
『今まで付き合った子達は好きじゃなかったの?』
「うん。でも、向こうだって俺の何が好きかって言ったら外見だけだよ。誰も俺自身なんて見てない」
それは真壁が見せようとしないからじゃないのかな
僕だって初め真壁のことを誤解してたけど、今はそんなことないし
『もっとみんなと話しなよ。真壁は、本当は面白くて優しいんだから』
仲良くなってわかったこと、それは真壁は心を開けばとても優しい。
心を開くまでは気難しいけど
「俺、あんまり人と仲良くできないんだよ」
『どうして?』
「過去のトラウマ?」
トラウマ?
「俺の親、どっちも会社の社長でさ、すっげぇ仲悪くて、、、今は離婚して母親は出てったけど、最後に母親に、お前がいなければもっと簡単に別れられたのにって」
真壁は笑っていたけど、声はすごく切なそうだった
「それが小1のころで、親父はそれから女作って家に帰って来なくなって、金が振り込まれるだけ」
それで人間不信か。
小1といえば6歳か、そんな幼い時に母親からも父親からも面倒を見てもらえず、、、1人ぼっち、、、
特定の恋人を作らないのも、人と馴れ合わないのも裏切られるのが怖いから?
人に執着しないのも、初めからいつかいなくなるって諦めてるから、、、
『でも、僕は真壁と仲良くなって本当はいい奴だってわかった』
真壁は黙ったまま僕の方を見ていた。
『だから、他のみんなとも仲良くしてみなよ!ひょっとしたらお互いすごく大切って思える相手ができるかもよ』
僕は笑顔で真壁にいうと、真壁は少しだけ笑った。
そして、僕の頰に片手で触れた。
周りは暗いのに、真壁の顔だけがしっかり見える気がする。
少しして真壁の手は離れたけど、触れていたところだけが妙に熱い。
「後夜祭、花火の時だけでいいから一緒に見よ」
真壁はそういうと、教室から出て行った。
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