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頑張れマオくん(3)
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なんだかとんでもないことをしてしまった気がする…。
気がつくと俺は1人、ユキの部屋のベッドで寝ていた。服は床に散らばったまま。ユキは出ていったらしい。
さっきの自分は絶対正気じゃなかった。じゃなきゃあんな…変なことしない。
さて、けっこう時間経っちゃったけど、あの悪魔はどうしてるかな…。
「…え?!なにこの大所帯…」
鏡を見ると、あの悪魔は複数の悪魔や人間と同じ場所にいた。しかも知ってる顔ばかりだ。サイム、リリツ、17号、スイと同じ顔の人間…これがエクソシストのアオイだろう。知らない人間も1人いる。
どういうことだ。全員知り合いなのか?スイに聞きに行くか…。
地下牢に入ると、スイが俺を見てにやっとした。
「マオくん服が乱れてるよ」
「…!あ、ああ…」
慌てていたせいで、上手く服を着られていなかったみたいだ。さっきのことを思い出してしまって、なんだか恥ずかしい。
「ユキくんと何かあった?」
「別に何も…。それより、これを見てくれ」
本当はあまり見せてはいけないんだろうけど、と思いながら鏡を見せる。
スイは鏡をちらっと見て、顔を背けた。
「人がたくさんうつってるね」
「これ、アオイだよな?」
なぜか見ようとしないスイに無理矢理鏡を見せると嫌そうな顔で答えた。
「そーだね」
「ここにうつってるの、みんなアオイの仲間なのか?」
「リシくんはアオイの知り合いだよね。どういう関係かはわからないけど、薬がどうとか言ってたな」
スイは次にサイムを指した。
「これはサイム。うちに居候してる子。理由は知らない」
そしてスイは俺の知らない人間を指した。
「これは…吉野くん。アオイを連れてくるのはいいけど、吉野くんには絶対に関わらないでね」
「うん…?まあ、こっちも用はないが」
「あとの2人は知らない。でも僕はアオイの交友関係全部把握してるわけじゃないから」
「そうか」
結局、あの悪魔とアオイのつながりはよくわからないのか。こんな強そうな悪魔とエクソシストが手を組んでいたら、俺に勝ち目はない気がする。
「マオくん、画面が変になってきてるよ」
スイに肩をつつかれ鏡を見ると、画面いっぱいに大きなゲートが現れ、全員を飲み込もうとしていた。
「な、なにこれ!このままじゃ全員が悪魔の世界に来てしまう」
「えっ、それって吉野くんも来るってこと?約束が違くない?」
ゲートはゆっくりと全員を覆い隠すと、突然画面が切り替わり、悪魔の世界の端にある、人間界へつながる穴が映しだされた。穴のそばで、全員が倒れている。
鏡の中の時間の速度が速くなり、悪魔の世界に来てしまっていることがわかる。
「まずい。行かないと」
「マオくん!ここには絶対、誰も入れないでよ!僕、人間界から家出してきてるんだから!」
スイがわめいているが、知ったこっちゃない。とにかく俺には、アオイを捕らえてあの悪魔をお父さんの所まで連れて行くというミッションがあるのだ。急いで2人のところまで行こう。
魔王の部下の悪魔たちを引き連れ、俺は穴の近くまで到着した。
「マオさーん。誰ですか、あいつらは」
「あー……客人だよ」
「なるほどー!」
「今からあいつらの魂回収してくるから、君たちは肉体を地下牢まで運んでくれ」
「客人に対する扱いとは思えませんが了解っすー!」
倒れているうちになんとかしてしまいたい。この人数だからな。
全員の魂を取り出して、例の悪魔はお父さんのところへ、他は地下牢に入れておけばいいだろう。
俺は静かに近づき、とりあえずサイムの体に手を突っ込んだ。
悪魔の魂も、人間と同じ。体のどこかに眠っていて、悪魔の力で取り出すことができる。
俺はそれを取り出すのが上手い。魂の場所を一目で見抜き、無傷で取り出すことができるのだ。
サイムの魂はお腹に、リリツは頭に、よく知らない人間は心臓に、アオイは目に。そして14号は…
「…あれ?」
わからない。
いつも魂の場所はほんのり光って見えるのに、14号はそれが見えない。手を突っ込んで直接探すしかないのか…?
「ん…んん〜?」
ごそごそしているうちに、14号が目を覚ましてしまった。14号は寝起きの不機嫌そうな顔で俺を見て、首を傾げた。
「なんじゃ?今どうなっとるんじゃっけ。お前…魔王の息子の…」
14号は自分の周りを見回し、はっとした。
「そ、そうじゃ!お前、スイを返せ!それにこの…みんな寝とるのも、お前がやったんか?!」
肝心の悪魔の魂をまだ回収できていない。あの悪魔の魂は、どうやら肛門のあたりに…
悪魔に伸ばした手を、14号がつかんだ。
「わしの話を聞くんじゃ!」
「俺は魔王の命令でそこのエクソシストを捕まえにきた。邪魔するな」
「邪魔するぞ!あいつに手を出すのは許さんもん!」
「そのへんの肉体を地下牢に連れて行け。後で魂も届けさせる」
14号は無視して魔王の部下たちに命令を出した。
14号はあわあわしているが、どうせこいつには何もできない。弱いから。
とにかく肛門に手を入れようと、14号を払いのけながら悪魔に覆いかぶさったところで…
「…え?」
悪魔が瞬きをした。起きてしまった。
「えっと…?」
悪魔は肛門に触れている俺の手と、俺の顔を見比べ、なぜか申し訳なさそうな顔をした。
「君、いくつ?」
「本当だったら来年悪魔の学校を卒業する歳だ」
「あー、すまないが、俺の守備範囲は小学生までのショタなんだ。だから、君の求めには応じられないというか」
「馬鹿ー!」
14号が頭をはたいた。
「何するんですか、上司さん」
「お前の勘違いっぷりが恐ろしくなったんじゃ!おい043号、こいつは魔王の息子じゃ。ここにいる全員の魂を抜き取ろうとしとるんじゃ!」
この悪魔、043号というのか。
「魔王の息子…」
043号に見据えられ、俺は思わず体を引いた。
どうしてこんな強い悪魔のことを、今まで把握できていなかったんだろう。
そもそも、悪魔の世界で見かけたことがないような気がする。
「魔王の息子なら、ユキくんの居場所、知ってるか?」
「…え?ユキ?」
043号の目力が強まった。
「知ってるんだな。こっちで魔王になったとか聞いたけど、本当か?」
「ああ…」
043号は、魔王になる前のユキを知っている。たぶん、人間だったころのユキのことを…。
「お前はユキと、どういう関係なんだ?」
「ユキくんは俺の家族だ」
…家族。
なんだそれ。
「…ユキのところまで、案内する」
どうでもいいか。
俺の役目は043号をお父さんのところまで連れて行くことだけだ。
回収した魂を魔王の部下に預け、俺はお父さんの部屋まで歩きだした。
後ろをついてくる043号に、なぜか無性に腹が立っていた。
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