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エピローグ→ザイ、キンカ、マオの場合(6)
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更新久々になってしまってすみません!このページで3人に関しては終わり、次のページからユキくんのエピローグを書いて終わりです!
ザイとキンカは…過去編以外超書きづらかったです…。
______________
「おい、そろそろいいか」
ザイの声が頭の中で響き、僕は回想シーンから一気に現実へ引き戻された。
「思い出した?」
ザイの視線はまっすぐ僕の目に向けられている。
「…うん。僕がカワセを殺して…」
「えっ?お前、今その記憶思い出してたの?」
ザイは呆れた顔をしている。
「だめなのかい?」
「だめだろ。俺が思い出してほしいのは、俺たちが仲良く付き合ってたこととか、マオのこととかなんだけど。カワセとのことなんて、どうでもいいじゃん」
「…でも、僕が初めてザイのことを恋愛的に意識したのはあの時だから」
「はあー?遅い。遅すぎる」
「じゃあ、ザイはどうなのさ。僕のこと、いつから好きだったの?」
「初めて会った時から」
「えっ?!」
「あんだけ助けてやったのに、気づかなかったのか?」
「いや、だって、気まぐれで助けてるのかと…」
「下心しかなかった」
「お、おお…」
「まあいいか。ラブストーリーにおいてただの幸せな時間なんて省略されがちだからな」
「…?ところであの後、カワセはどうなったんだっけ?」
「熟成させた」
「はあ?」
「強化エキスに漬けて熟成させたんだよ。そして再び肉体を与え、生まれたのが今の魔王…043号だ。カワセだったときの記憶や性格は全く残ってないけどな」
「………え?!」
つまり、結局カワセは魔王になれたってこと?
今の魔王、どんなやつなんだろう…。
「で、そんなことより思い出してほしいのは、俺がどれだけキンカを愛してるかってことなんだけど」
「そ、そんな堂々と言われると照れるな…」
「何回でも言ってやるよ。俺はキンカを愛してるし、マオのことも愛してる。そんな2人がいる世界を守りたくて、俺はキンカの記憶を消して、マオへの愛情を消して、魔王になった」
「…うん」
「俺の力は、もう残り僅かだ。あとは静かに滅びていくのを待つだけ。俺はその残り時間を、キンカと共に過ごしたい」
「…え?ザイ死ぬの?」
「ああ。余命1万年だ」
「いやそれ長くない…?」
「もう少し縮む予定」
そう言ってザイは、パチンと指を鳴らした。すると一瞬にして、目の前にマオが現れた。
マオに会うのは2回目だ。1回目はザイが「地獄で採用してくれ」とか言って無理矢理面接させられた時。あの時は意味がわからなかったけど、ザイはきっと生まれてすぐ離れ離れになった僕とマオを引き合わせたかったんだろう。
久しぶりに再会したマオは、明らかに元気がないように見える。何かあったんだろうか?
「やあ、マオ。調子はどうだ?」
「………」
「いやいや、ザイ。調子なんて聞くまでもなく悪そうだろう?一体何があったんだい?」
見かねて口を挟んだが、2人ともに無視されてしまった。悲しい。
「ユキはどうしてますか」
マオはポツリとそう聞いた。
「気になるのか?お前を散々利用して、ポイと捨てていった男の末路が」
「………」
「ユキは人間界に帰ったよ。悪魔にまつわる記憶は全て失った状態でな」
「…え?」
マオはゆるゆると顔を上げた。
「じゃあ、ユキはあの悪魔の記憶も失ってるんですか?」
「ああ、そうだな。ユキの記憶の中でも、043号との記憶は一番容量が大きかった」
「…だめです」
「何が?」
「ユキは、誰かに依存しないと生きていけないんです。人生の大半を一緒に過ごしていた悪魔の記憶を奪われ、そばに誰もいないとしたら、ユキは壊れてしまいます」
「壊れているのはお前の方だろう」
ザイはぴしゃりと言い切った。
「お前を壊していったユキのことを、親として許せない」
「…親として?」
「ああ。俺はもう魔王じゃない。マオの親だ。キンカもな」
「い、いや、僕は親とかはいいよ…」
ボソボソと言ってみたが、当然のように無視される。
「よくわからないです。親としてってなんですか?」
「ま、わからないよな。急に悪魔にはない概念を出されても」
ザイはそんなに意外そうな顔もせずにうなずいた。
「そんなお前に1つ提案だ。お前の願いを1つだけ叶えてやろう」
「…願い?」
「ああ。悪魔との契約だ。ユキをもう一度悪魔にすることだってできる。043号とは会わせられないから、2人で一緒に地獄で働けばいい」
「えっ地獄で?そんな避難所みたいに使わないでくれよ」
思わず口を挟むと、ザイは僕を睨んだ。
…まあ、わかる。ザイ的には、家族全員地獄で生活したいんだろうな。
だかそれはザイの気持ちだ。僕は会うのが2回目の息子にどんな感情を抱けばいいのかわからないし、マオだって今まで他人行儀だったザイに親子アピールをされても知るかって感じだろう。
「…わかりました。お父さんと契約します。俺の悪魔としての寿命を全部差し上げるので、俺を人間にして下さい」
「は?人間?」
「ユキを守れる人間になりたいんです。あの悪魔が戻ってくることが、ユキにとっての1番なのかもしれないけど、それがだめなら俺が代わりに保護者になりたい。2番でもいいから」
「……なあ、キンカ。ユキにそれほどの価値があると思うか?」
ザイは呆れたようにそう聞いた。
「いや僕ユキのことよく知らないし…あっでも、ユキの両親なら知ってるな。あの父親は本当に厄介だよ。ユキが地獄で働いたら、あの厄介が2倍になるってことかい?まさに地獄」
「…あっそう。まあいいや。それがマオの願いなら、約束通り叶えてやる。ただしお前の寿命はいらない。使うのは俺の寿命1世紀分だ」
マオが来てから僕の話はほぼ全て流されてる気がするな。
「お父さんの寿命を…?どうして?」
「願いを叶えるには誰かの寿命が必要なんだよ。俺からマオへのプレゼントだと思ってくれ」
そう言ってザイは地面に手をかざした。すると手の下に真っ暗な穴が現れた。穴はぐぐっと広がっていき、子ども用プールくらいの大きさになった。
「おいおい、僕の部屋の床に穴を開けないでくれよ」
「マオ、この穴に落ちればお前は人間になれる。ユキを一番近くで見守れる人間に」
「…はい」
おお、まるで我が子を嫁に出すみたいだな。
「俺は反対だよ。ユキはいざとなったら簡単にお前を捨てる。それはわかってるんだろ?」
「…ユキが寂しくなくなればそれでいいです」
「キンカぁ、どう思う?この損しかしない献身性」
「んえ?僕?ちょくちょく意見求められるけど、どうせ無視するんだろう?」
そうは言いつつ、少し考えてみる。ユキのこともマオのこともよく知らないけど。
「んー…うらやましいね」
「は?どうして?」
「僕はそんなにも強い想いを捧げたことがないし、きっとこれからもないだろうから」
「…ないのかよ。俺相手にも」
「ザイはそんなことさせてくれないじゃないか。なんでも1人で勝手に進めちゃうんだから」
「たしかに?」
記憶は蘇ったけど、時間は戻らない。ザイとの空白の思い出はもう埋められないのだ。
でも、きっとザイはもっと辛かったんだろう。長い間自分の大切なものを全部遠ざけてひたすら魔王の仕事をしてたんだから。
一言でも相談してくれればよかったのに。
「ところでマオ、人間になる前に1つ確認してもいいかい?」
「…なんですか」
話しかけると、マオはようやく僕を直視してくれた。
見た目は僕にもザイにも似ていない。だけど何かが引っかかる理由がわかった。マオは、昔の僕と雰囲気が似ている。
「僕がマオを産んだってこと、マオは知ってるんだっけ?」
マオは至って興味がなさそうにつぶやいた。
「知らなかったです」
「じゃあいいことを教えてあげよう。僕は悪魔と人間のハーフ。だからマオはクォーター。かっこいいだろう?」
「………」
マオはコメントを求めるみたいにザイの方を見た。
「キンカのことは無視で大丈夫だ」
「わかりました」
「そんなことしていいのかい?マオが死んだら地獄へ案内するぞ」
「…じゃあ、行きます」
「えっ?今?」
会話の流れをぶった切って、マオは穴へと進んでいき、何の感慨もなく消えていた。
「マイペースだな〜」
なんだか感心してしまう。ザイはというと、淡々と穴を縮小させていた。
「寂しいのかい?ザイ」
「…いや、不安なだけだ。マオがちゃんとやっていけるのか」
「寂しいなら僕が慰めてあげよう」
「話聞いてんのか」
「さあおいで。子どもが欲しいなら作ればいい」
手を広げてみせると、ザイはため息をついた。
「お前、ハーフを名乗るわりに人間味がない思考回路だな」
「いいじゃないか。記憶が戻った記念の性行為をしよう」
「ああ…素直で恥じらいを持ったかわいいキンカはどこに行ったんだ」
ザイはそう嘆きながら、広げた手の中へ飛び込んだ。
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