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歩いて転んでドキドキキャンプ!1(聖夜side)
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とうとうこの日がやって来た。待ちに待ったキャンプの日だ。
朝の6時に学校集合という難関を乗り越え、さらには妙なテンションの一部の生徒の騒がしい声を聞きながらの長時間に及ぶバス移動。
スナック菓子の袋を開ける音はもう聞き飽きた。
そんな苦痛な時間も終わり、今目の前に広がる光景に疲れも遠く彼方へと羽ばたいていった。
青い空と共鳴するように広がる緑色の山。小鳥がさえずり、教師が注意事項を述べる。なんてすばらしいところなんだ。
都会で過ごしていると疎遠になってしまう自然の空気はとても綺麗だ。
長かった注意事項も終わり、少し重い登山用のリュックを背負って立ち上がる。地面に体育座りしていたせいでお尻についた砂埃は洗濯しなければ綺麗に取ることはできないだろう。
『皆んな、忘れ物はない?』
『聖夜、先生からお弁当をいただくのを忘れていますよ』
昼ごはんは各グループで食べること。当然食べる場所は山の上だろう。だが肝心の弁当がなければ食べることもできない。楓に指摘されて慌てて弁当を配る教師の元に走る。気が緩んでいたということだろう。しっかりしないと。
人数分の弁当を確保して、今度こそ忘れ物がないことを確認できると早速歩き出す。
山と言っても舗装された階段の一本道をひたすら歩いて行くだけ。道に迷うなんてことはまずないだろう。
それに、前にも後ろにも沢山の生徒が居るのだ、間違えようがない。
ただ、これは結構エラいな。まだ少ししか歩いていないのに息が上がり始め、苦しくなってきてしまった。
海と楓は体力がある。どんどん、どんどん進んでいってしまう。むしろ今ゆっくり目にしてくれているくらいだろう。
若葉も体力はない方だけど今は普段とは違う特別なイベントに興奮しているのだろう、テンションが高く、そのテンションで乗り切っているようだ。
綾人は適度な速度なのだろう、はしゃぐ若葉にいつもの完璧な笑顔を向けている。
創はと言うと、わざわざ歩く速度を合わせてくれていた。後ろにいたグループに抜かされていっているのに文句ひとつ言わず隣に居てくれている。ありがたいな。
1人で後を追いかけるよりもやはり1人でも隣に居てくれると嬉しいものだ。
それにしても重い。海はテントも持ってくれているのに涼しい顔をして登って行けるなんて流石だな。やはり鍛え方が違うと言うことなのだろう。
肩に大きな負担をかけてしまっているからだろう、頭がズキズキと痛くなってきた。意識が遠くに感じる。
こういう体力が必要なことがあるたびに思うことは体力つけておけばよかったということ。毎度後悔するのだけれど、でも結局は生徒会の仕事や勉強で体を鍛える時間がないのだ。
しかし突然のことだった。荷物を後ろにグイッと引っ張られて、その後体が軽くなる。頭の痛みも無くなり、今や頭までもが軽く感じる。
犯人は、隣の男だった。
1つでも重いはずのリュック。自分の分は両肩に背負って居て、もう1つ右肩にかけているのは俺のリュックだ。
『2人とも大丈夫ー?』と叫んでくれている海に『先行ってろー!後から追いつく!』と創が返す。
まだ頭は創が2人分の荷物を持っているという状況に追いついて居ないのだけれど、その大きくも優しさで溢れている手でガシガシと頭を撫でられれば考えることなんてやめてしまえと言われている感じがして気持ちは少し和らいだ。
『せ〜やッ、少し休憩スッぞ。さっきから何も飲ンでねーだろ!それにフラフラじゃねぇーか。ほら、俺が隣に居てやンから、2人でゆっくりいこーぜ。山は逃げねーンだしよ』
そう言えばいつからお茶を飲んでいないのだろうか。もし創が居なかったら脱水症状で倒れていたところだったな。
促されるままに大きな石にもたれかかる。結局1番最後になってしまった。もう皆んなの背中は見ることができない。
本当なら走って追いつきたい気持ちは当然あるだろう創に申し訳ない気持ちが込み上げてくる。それでも何も言わずに隣に居てくれる創に今は甘えてしまっている。
だって先程から絶えず頭を撫でてくれているその手があまりにも優しかったから。
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