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日々青春。3(創side)
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『ねぇ、食べないの?』
上目遣いでこちらを見つめてくる聖夜。キョトンとした顔もまた可愛らしい。
ずっと見ていられる。むしろ唐揚げのことを忘れて聖夜を見てしまっていた。
だが、ずっとこうしているわけにもいかない。周りにこの気持ちがバレてしまうかもしれないからだ。相談することも考えてはいるのだけれど、男が男を好きだなんて聞いたらどんな反応をするだろうか、と不安なのだ。いざという時に行動できないのは性格だ。
『はじめん食べやんのやったらウチが貰うー!』
『あ"ぁ"?誰が食わねーッつったんだァ?』
危ないところだった。もう少し反応が遅かったら海に聖夜の間接キス…じゃなくて唐揚げを取られるところだった。聖夜と海の間に座っていたことが功を奏した。
唐揚げを狙ってきていた海の顔を片手で掴み、そのまま睨みを効かせる。今回ばかりは譲れない。
改めて聖夜の方に体を付け直して、緊張してきた。まるでファーストキスをするかのような気持ちになってくる。いや、これは聖夜とのキスだとカウントしても良いだろう。俺が許す。
聖夜とのキス。初めての、キス。俺のファーストはもう終わっているけれど、聖夜は終わっているのだろうか。聞きたいけれど、聞きたくない。聞く勇気がないので今回は保留にしよう。
覚悟を決めて唐揚げに自ら口を近づける。一見普通の唐揚げだ、普通以上の期待はしない。
期待は、していなかった。
『ウマッ!?なにこれ!?えっ……えー…うまぁ〜…』
噛んだ瞬間に溢れ出す肉汁。甘い肉汁が口の中に広がり、下味の胡椒の風味が後から現れる。全くパサつきのない唐揚げは噛むほどに肉汁が溢れ出し、口の中は美味しい要素で満たされる。全くニンニクの臭みがなく、むしろ後味もさっぱりとしていて、まさかこんなに美味しいとは思わなかった。驚きのあまり全員の顔を順に見ていき、そして製作者の綾人を見る。"普通"だなん滅相も無い、こんなに美味しい唐揚げ、よっぽど高い食材を使っているのだろう。
確かにこれは海が食べたがったのも納得できる。まさか学校でこんな店のような味を味わうことができるとは思っていなかった。
もちろん聖夜が食べさせてくれたから美味しいということもあるのだけど、それだけでは無いことは確実で、もしかしたらこの"普通"だと思っていた弁当はかなり凄いものだったのだろうか。
『綾人スゲーな!良い食材使ってンだろ?なンか、そんなスゲーもん貰っちまって悪りぃなぁ〜』
『えっ、高い食材なんて使ってないよ?唐揚げの肉、昨日スーパーで特売だったんだよね。皆んな大袈裟すぎだよ』
ほらな、スーパーで特売の超高級…えっ!?スーパー?特売?いやいやいや、そんなわけない。それじゃあこの唐揚げがこんなに美味しかったのは本当に聖夜が食べさせてくれたおかげ?
綾人の謙遜する言葉は謙遜なのか事実なのか分からなくなってきてしまう。照れたようにハニカム綾人を思わずガン見してしまっていた。
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