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「…………」
早朝。いつもなら寝ているはずの時間に不思議と目が覚めた。
だが目覚めた所で身体はまだ満足に動かせず、上体を起こすのがやっとだ。
「いつまでこの調子なんだよ……」
意識が戻ってからもう半月が過ぎてる。
そんなベッドの上で暇を持て余した俺が考えるのはあいつの事ばかりだった。
・・・嫌だ!何であんたを忘れなきゃならないんだよ!?・・・
・・・これはお前の為だ・・・
・・・それはブラッドが勝手にそう決めつけてるだけだろ!俺はあんたを……忘れたくない…!・・・
最後に見たのが悲痛に歪む顔だったせいで余計に気になって仕方ない。
でもスバルはもう、俺のことは何も覚えてないんだ。
せめてあいつが笑って暮らしてるなら少しは気持ちに区切りが付くかもしれないが、確かめようもない今の状況は俺を苦しめるばかりだった。
そうやっておれがいつものようにあいつの事を考えていると、何の前触れもなく静かにドアが開く。
「珍しいわね、もう起きてたの?」
「…悪いか」
部屋に入ってきたリズの嫌味な態度が癪に障る。
だが本人は俺がどう思っているかなんて気にも止めずベッドへ近付き、何かを握っている片手を俺に差し出した。
「いいえ、ちょうど良かったわ。あんたに確認したい事があるの。これ、あんたのペンダント?」
「は……?何言ってんだよリズ?そういやお前もそろそろボケる歳か…」
「誰が婆さんよ、このクソガキ。その役立たずの眼球を引っ張り出してやろうか?」
「そりゃいいな。お前の顔を見ないで済むなんて清々するよ」
いつもの調子で会話を交わし、リズから差し出された物に視線を移した俺は思わず息を飲んだ。
純潔の深紅だけが受け継ぐ装飾。その中央にはロードライトガーネットが深い輝きを放っている。
「なんでお前が……!?」
ガキの頃に俺が落として付けた薄い傷もしっかり裏に刻まれている。
間違いない、これはスバルにやった俺のペンダントだ。
「さっき美味しそ…可愛い男の子が来て、これを渡していったのよ」
混乱している俺にリズの言葉は耳を掠めるばかりでまともに理解なんて出来ない。
だが"男"という言葉に心臓が痛い程跳ね上がった。
「そいつ…名前は」
「さぁ?聞く前に行っちゃったから。でもいきなりあんたの名前を出したから何事かと思ったわ」
あり得ねぇ。俺に関する記憶は全て奪ったはず…。
つまりスバル以外の誰かがこれを…?
だったらあいつの身に何かあったのか…!?
「どんな様子だった?」
「そうねぇ…、ずっと俯いてたわ。やっと喋ったのが"ブラッドはここにいますか?"の一言だけ。だから"彼ならベッドにいる"って答えたら泣きそうになっちゃって、ほんと可愛かった」
「っ!?何でそんな言い方したんだよ!」
「あら、知り合い?だって本当の事じゃない。あんたの身体はまだボロボロなんだし……っブラッド!?ちょっと何考えてるのよ!?」
「そいつどっちに行った!?」
久し振りに立ち上がった脚はろくに言うことを聞かず力が入らねぇ。
それでもその男がスバルだと確信した俺は俺はリズを問い詰めて軋む身体を引き摺るように外へ出た。
「俺がどんな想いで記憶を奪ったと思ってんだ…!あのバカ!」
もしかすると俺をおびき寄せる為の罠かもしれないってのは分かってる。
でももしそうじゃないとしたら?
探した所で簡単に見つかるはずもないこの場所を突き止めといて、何で何も言わずに居なくなるんだよ…!
「スバル……」
お前は俺に何を伝えたかった?
あのペンダントの意味を知ってて俺に返したのか?
あいつの名を呟くと胸が引き裂かれるような痛み、俺は息も絶え絶えに人混み中あいつを探した。
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