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6話「勝負した」
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しばらく川を見てから、立上がって歩き出した。
まだ散りきっていない桜の並木道を歩いて、フラフラと。どこという目的地も無く、2人で。
緊張が抜けて来た俺たちは、互いに色んな話しをした。
「で、今年はそのマフラー?」
「まだ寒いだろうからって。でも熱くなって来たなー、とろー」
まだ寒い日が続く4月。けれど歩いていて体が温まったのか、今はマフラーが邪魔に思えて。一旦止まって取り去ったマフラーを鞄に詰め込む。
ギュムリと口を閉めてから、再び背中にそれを背負った。
「でもいいよなー。幼馴染みに毎年プレゼント貰えるとか。超仲いいじゃん」
「仲いいってか、うーん。何か面白いよー、アイツ」
「どんな子?」
4月に入ってすぐが俺の誕生日。毎年幼馴染みがいらないといっているプレゼントを寄越して来る日。
「えー・・と、小さい」
「お前からしたら誰でも小さいわ」
「あはは。まあ、そうか。でもほんとに小さい奴だよ。超コンプレックス感じてらっしゃるみたいだし。ひゃくー・・・152?センチ?くらいっつってたかな」
「あー、女の子にしても小さいな」
ヒラヒラと落ちて来る桜を見上げながら、ぼんやりとそんな会話を始めた。
下に落ちた花びらがつもって、絨毯みたいになっている。
「小さくてー、うるさくてー・・あー。すげー重たい彼氏持ち」
「重たい?」
「体重じゃなく。嫉妬やばい。俺何回も家まで文句言いに来られた」
「なにそれ!超ウケるじゃん!」
あはは、とまた大きな笑い声がした。
「すげーんだよホントに!アイツの彼氏超怖いから!!」
「なになに、どんな文句言われたの?」
「え?えーとね・・メールするなとか、ラ○ンするなとか・・あと俺がもらったプレゼント全部捨てろとか」
「超怖い!!」
「だろ!?俺悪くないよね!?」
ギャアギャアと周りに響く互いの声。
風が吹く度に降って来る薄いピンク色の花びらが派手に舞う。
のんびりとした春の陽気。
眠たくなってきた。
あーあ。今年は受験か。まだまだ、皆とのんびりバカなことをしていたかった。せっかく、こうして気の合いそうな友達も増えたのに。
「すごいなー。よく付き合ってられるなー」
「だよなー」
軽く笑って、千田が花びらを踏まないように変な歩幅で歩き出す。
「腹へったかも」
「今それ考えてた」
俺がポツリと言った言葉に、千田が笑いながら返して来る。
千田と同じように、俺も花びらを踏まないように歩き出した。
「どっか食いいくか。コンビニで買ってどっか行って食べんのもいいなぁ」
また風が強く吹いた。
髪を気にしながら、足元に視線を落とす。
「いいなあ、それ。桜綺麗に見えるとことか」
「おー、いいね」
「公園とかないのかな、この辺」
「っつーかまずは昼飯買うコンビニ見つけないと」
「あー、そうだった」
「どっかにないかなー・・あ、踏んじゃった」
「千田の負け」
「今勝負してたの?!」
千田の黒いローファーは、物持ち良いのかあまり傷ついていなくて綺麗だった。
対して、俺の履いているそれは、靴底も大分すり減っていて所々が白くはげ上がっている。
「コンビニ探そうぜ」
「ん」
フラフラフラフラ。また勝負を始めて。
2人してフラフラ。
桜の道を行く。
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