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なりそうにない
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「今晩はぁー」
点呼の時間、いつものように、事務所に寄って名簿と宿泊許可証をもらう、僕と戀兎、おばちゃんはいつものように、ニコニコしていたが、眉をよせ戀兎に尋ねた
「中山君どう?」
「熱は下がってきたし、本人も頑張るって、保健室でテスト受けてますよ。もう一息ですね」
そうなんだ、テスト受けてたんだ。
…中山さん早く元気になるといいなぁ、テストまだあるし、辛いだろうし。
熱が下がり出したのは聞いていた、あと2・3日で復帰出来るよ、と戀兎も昨日言っていたので安堵した夕祐。
少しだけ寂しい気分もあるが、人の病気を喜んだりはできない。
見回りのために出た外で、綺麗な月が辺りを照らしていた。
初めて見回りした日も、こんな風だったと思ってドキドキしたのを思い出す
。
「あ!」
月明かりの中、目の前の景色に目を奪われる。
遅れていた桜の木が花を開き、静かで綺麗にそこにたたずんでいた。
「見て見て戀兎!咲いてる!」
戀兎の隣を歩いていたが、桜の木に掛け寄り、桜を眺める。
桜。春になると咲く、出会いと別れの象徴。こないだは桜に囲まれて戀兎に告白をした、あの桜に比べたら、規模が小さいけど、桜が綺麗なのはどこで見ても同じだ。
「…でも、もう梅雨になるから直ぐに散ってしまうよ…、寂しいね」
後ろから歩いてきた戀兎が呟く
「そうだけど…」
「桜って、綺麗だから、直ぐに散ってしまうのかな?」
隣に並んだ戀兎、桜を見るその瞳に違和感を感じた。
「また、咲くよ。この木がこの土と空に愛されてるから」
「え?」
「詩人ぽかった?」
僕がニンマリしたら、戀兎は目を丸くしてその後、複雑な顔をした。
「向かないね」
あ、やっぱり。
僕には詩人とか小説家とか、きっと向かない、言葉って、難しくて深みのある、みじかなもの。
「僕もそう思う」
笑った夕祐を、何処かさみしそうに見て微笑んだ戀兎、彼が何を恐れているのか、夕祐には分からない。
「行きましょうか、火浦君」
「はーい」
僕たちは少し急いで寮内へ向かった。
「夕祐さん」
寮の入り口で急に後ろから抱きつかれ、その声と重みに覚えのある僕は、福リーダーらしく低い声を出してみた。
「ダメでしょ、夜風君」
背中に抱きついた夜風は、そんな夕祐をケラケラ笑って、抱きつく腕に力を込めた。
「部屋まで運んでェ〜」
「夜風君、点呼の時間ですし、火浦君と僕は君の部屋担当ではないですよ」
「有馬先輩のケチ」
戀兎に怒られて、夜風はベロっと舌を出した。
夕祐はまた、夜風のおでこをポンと叩いて、福リーダーらしくキリッと
「ケチじゃありません」
って言うと、目を丸くした夜風がブブッと吹き出して、夕祐の背中からずり落ちて笑いだした
「あはははは!!今の、ひな兄みたいだよ!!あははは!!母ちゃん風?あはは!!」
「プッ」
あー!戀兎まで笑った!!
おかしいなぁ、キリッと決めたはずなのになぁ。
夕祐は夜風をキリッと見つめて
「夜風君!お部屋に戻りなさい!」
「はーい」
「有馬先輩行きましょう」
「ふふ、うん」
結局、最後の言葉「お部屋」に笑われてることに、残念ながら夕祐は気づかないので、やはり、かっこいいには程遠いいのでした。
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