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「…どうかしましたか」
「あ、いえ…」
そこにいたのは、昨日見た伊織の記憶よりも少し大人びた姿の日高先生であった。何故か、胸が少しズキリと痛んだがまだ夢の余韻が残っているのだろうか。
「それなら、早く教室に行ってください。遅刻しますよ」
「…あの」
そう言って去ろうとした日高先生に、思わず引き留めるかのように話し掛けてしまう。あぁ、何やってんだ俺。
「……まだ何か?」
「天井、伊織という人を知っていますか」
面倒な事に自ら頭を突っ込んでいる事は理解しているが、もう放っておくわけにもいかなくなってしまった。このままだといつまで経っても俺が気になってしまう。つまり、これも俺のためだ。
「っ!?何故、貴方がその名前を…どこで…」
目を見開き、珍しく困惑しているようだ。普段の冷静な姿からは考えられない。…少し新鮮だ。ああもう知らん、どうにでもなれ。
「本人から聞きました。……あなたの事を忘れられないと」
「…そんな筈はないでしょう。彼はもう…いえ、何でもありません。何処でその名前を聞いたのかは分かりませんが、からかうのもいい加減にして下さい」
日高先生は俺の言葉を聞き有り得ないと思ったのか、動揺をすぐに打ち消した。まぁ、普通は信じないだろうな。そう思うのも無理はない。それも理解している。
「伊織は、自分の事を忘れてほしいと願っているんです」
「っ、」
そう言うと日高先生は突然俺の腕を掴み、少し先にある準備室まで強い力で引っ張っていく。見た目よりも力があるようだ。なかなか痛ぇ。
準備室の扉を閉めると、日高先生は怒ったように俺を睨む。ガチ切れ激おこなようである。ヒェッ…
「どこで、その話を聞いたのですか。脅すつもりですか?そもそも、伊織がそのように思っている筈がない。私の事など恨んでいるでしょう。…その位の事をしてしまった自覚はある」
「…すみません、突然すぎました。……今から言う事は嘘じゃありません。信じられないかも知れませんが、俺にとっては真実です」
「……な、にを?」
「俺には、伊織の姿が見えています」
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