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「これで、本当に最後だ。慧…ごめんね。千梨にもたくさん迷惑かけちゃった」
「…待って下さい」
焦ったような日高先生に強く抱きしめられる。痛いくらいの強さに、少しだけ笑みが零れた。
「私はどうしてもあなたを忘れることなどできない。…けれど、これだけは覚えて下さい。あなたの事を忘れないのは自分の行いへの戒めなどではなく、あなたを今までも、…これからも愛しているからなのだと」
「……慧、ありがとう」
それだけ言うと、何故か目の前が暗くなっていった。何故か内側にある筈の意識も遠のく。同時に、俺の中から伊織が出ていったのが感覚で伝わった。
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「…目が覚めましたか」
目を覚ますと、見覚えのない真っ白な天井。ここはどこ私は誰を地でいけそうな展開である。しないが。
「あぁ、えっと、はい。……ここは保健室ですかね」
「そうですよ。伊織は、いなくなったのですね」
「…はい。俺の中からは完全に出て行ったんだと思います」
そう言うと日高先生の表情に一瞬翳りが見えたが、直ぐに何も無かったかのようにいつもの冷静な顔へと戻った。無理をしてるんだろうか。
「大御門、…ありがとうございました。あなたのおかげで私は伊織に全てを伝えられました。…本当に、あなたには」
「あー、いや…俺も自己満足みたいなものでしたし、すみませんでした」
元はと言えば俺のおっちょこちょいのせいである。今回は伊織のような良い霊であったからまだしも、これが悪霊だったらどれだけ面倒なことになっていたか。何でもかんでも首を突っ込んでいいものでは無いな。またひとつ勉強になったナー(棒)が、今後は是非遠慮させて頂きたい。
「いえ、本当にありがとうございました。…そういえば、気が付いたらそこに花が置いてあったのですが誰なんでしょうね」
心底不思議そうにそう言われ、目線を辿って同じ方向を見ると、本当に一輪の花が置かれていた。…あれは、アネモネだろうか?
通常より霊力が無くなっている関係で、違和感があるという以外は特に何事もなく、そのまま寮へと帰ってきた。実家のような安心感である。
しかし、何となく先程見た花が気になり、検索をかけてしまった。出てきた結果は「あなたを愛します」で、まあよくある花言葉である。しかしその下までページをスクロールしたことをマリアナ海溝よりも深く後悔した。後悔先に立たずとは正にこれである。oh…これはサブイボ案件だ。
「見捨てられた」「見放された」
何故だか絶望したような、蔑むような花言葉に酷く寒気がした。
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