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「 はぁっ、.......はぁっ、は.......やば、きっつ....... 」
膝に手を当て腰を曲げた。
なかなか息が整わなくて、肩を上下に揺らし呼吸する。
前かがみになると、自分の影が目に入ってちょっと目の前が暗くなり、視界がぼやける。
約2、3年振りの全力疾走だった。
正直かなりきつかった。
肺が掴まれたみたいに痛いし、口の中は血の味がするし、喉もカラッカラで何より太ももが痛い。
最悪だ。
.......でも、
だけど、それでもやっぱり
楽しかったのだ。
チラッと先生の方を見ると、ストップウォッチを見つめあんぐりと口を開けていた。
あの表情からして、1回目よりはマシなタイムだったんだろう。
あんまり実感ないけど.......
こんなにも何も考えずに、全力で走ったのなんてすごく久しぶりでとても嬉しかった。
きつくて苦しくて最悪でも、それ以上に俺は走るのが一番好きなんだってことを思い出した。
たった6秒ちょっとの時間だったけど、走ってる間は何にも縛られない自由を感じることができ、例えようもない幸せが俺を包み込んでくれる。
.......そんな気がするのだ。
久しぶりの感覚にまだ心臓が鳴っている。
でもこのドキドキはきっと息切れではない。
高揚と多福感、そしてちょっとの興奮だろう。
何度経験しても飽きることがない、満ち足りた気分。
すごく気持ちいい.......
ドキドキが治らなくて不思議な感覚だったけど、また無性に走りたいと思った。
いつまででも走っていられそうな熱が、体の奥から湧き上がって離れない。
もう1本。
最後にもう1本走っていいかな.......
欲求を抑えられなくて、息が整わないままもう一度走ろうと思って、Uターンしたその時。
「 い"ぃっっったっ!!!! 」
.......盛大に足をつり、大転倒した。
.......いや、笑わないで欲しい。
俺だって、やっちまった.......くらいは思ってるから。
だってよく考えたらそうだよな。
何年も走ってなくて、運動不足もいいとこの俺がろくに準備運動もアップもなくいきなり50メートル全力疾走だぞ。
そりゃ足くらいつるわ。
走りたい!と思ってる気持ちに体がついていかないんじゃどうしようもない。
ださっ!
いたい、いたい、いたい.......
やっぱり走るんじゃなかった。
ふくらはぎが悲鳴を上げている。
ちょっとでも筋肉に力を入れると、途端に激痛が走って立ち上がれない。めちゃくちゃ恥ずかしい。
はぁっと溜息をついた。
あ、なんかみんなが笑ってるし.......
でもいつもの嫌味っぽいイヤな笑い方じゃなくて、今はほんとに可笑しそうな笑顔。
まぁ、ドン引かれるよりは爆笑してもらった方が俺のメンタルはまだ救われるから良いのだけど。
どうやって立ち上がろうか考えていたら、急に俺のものではない影が、フッと視界に入ってきた。
「.......おい、お前大丈夫かよ....... 」
呆れたような顔で笑いながら、俺を上から見下ろしていたのは白石君だった。
「 .......足つった。」
「 .......見ればわかる。」
「 なら助けてよ、立てないんだけど。」
「 ふっ、.......はいはい。」
ほら、と言って、白石君が手を差し出してきた。
その手に捕まり、なるべく足に力が入らないようになんとか立ち上がる。
「 お前、普段走ってないの?」
「 .......ないな。中学以来です。」
「.......の割にはめっちゃ速かったじゃん、フォームめちゃ綺麗だったし.......全然衰えてないよなぁ。」
「.......走りだしたら、なんか感覚が戻ったのかも。めっちゃ足に代償払ったけど....... 」
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