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今日も、チラシ配りが終わると、あの場所へ向かっていた。すると、もうあの場所の緑が見えるというところで、反対側から走ってくる人影が見えた。
なんだ……?
と、目を凝らしてみると、それがレインだということに気づくのは容易だった。
「……?」
レイン?…なんで走ってんだ?
昨日よりは早いし……ただたんに寝坊しただけか?
俺はそう思いながら一度止めた足を動かして、緑が綺麗なあの場所へ向かった。
一面に広がる緑の芝生に足を踏み入れると、俺は座ってレインが来るのを待っていた。すると、案の定、俺から見て右の民家の影からレインが汗をかきながら走ってきた。
「わ、悪いっ……遅れたっ、ぅわ!?」
「ちょ、え……は!?うお!?」
ドサッとレインは俺に倒れ込んだ。
その瞬間、レインからふわっと甘い香りが舞う。
「っ……!!」
それが俺の鼻を掠めると、ドキッと心臓が大きく波打ち、身体が熱を持つのを感じた。
レインに聞こえないように、静まれと心の中で念じ続けながら次の言葉を紡ぐ。
「……び、びっくりした……。レイン、気をつけろよ……。」
ドキドキと高鳴っている心臓。レインに聞こえてはいないか、と冷や汗を垂れ流す。
「あはは、悪い。」
あ……。
すると、レインは若干苦笑いを浮かべ、俺から離れて隣に腰を下ろした。
俺から離れる時、少し寂しいような、悲しいような感覚になったのは、きっと気のせい。
すると、またあの香りが俺の鼻を掠める。当然、俺の心臓が煩くなってしまう。
「はぁ、怪我でもしたらどうすんだお前。」
俺が平常心を装ってそう言うと、レインは暗い顔をして、頭を抱える。
え……俺、なんか変な事言ったか……?
「本当だ……俺、ショウマに怪我させたら……っ、悪い……っ」
なんか違うぞ。俺は、レインが怪我したらどうするんだって意味で言ったんだけども。
完全な勘違い。
でも、俺を心配してこんなになってくれるレインに、少し嬉しく思ってしまって、レインには悪いけど、もっと心配されたいと思ってしまう。
「違うだろ。」
「え……?」
レインは涙で潤んでいる目を俺に向ける。
「俺が言ったのは、お前が怪我したらどうんすんだって話。」
「俺は怪我しても大丈夫なの。」と言ってレインの顔を両手で包んだ。
すると、レインはポカンとして、嬉しそうに笑った。
「ふへ……。」
ドクンッと心臓が跳ね上がる。身体と顔の温度が上昇して、暖かいはずの気温が冷たく感じた。
それをレインに気づかれたくなくて、レインの頬を掴み、引っ張って、誤魔化す。
「なにひゅんらぁ……。」
「ふは、マヌケな顔してたから直してやろうかと。」
「なんらとぉ?」
俺はむにむにとレインの頬で遊ぶ。「うー……。」と唸っているが、俺にはそれが可愛く思えて仕方がなかった。
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