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「そうだ!チビたち!
俺のように大きくなってほしいです!
でもねっ、
俺のように頭が悪いと格好が良くないですから、
参考になりそうな人を紹介するね!」
勢いよく、
名案を思いついたと立ち上がったアーサーにつられて2匹もしっぽをピーンと立てる。
「…ああ、肖像画をお見せになるんですね?」
「うん、そういうこと!
お姫さまも一緒に行きましょう?」
「は、はい」
ソファから立ち上がり、レミルのエスコートを受けて部屋を出る。幅も高さもある大きく白い廊下を歩くと、レミルはとある1つの部屋を開けた。
「お姫さま、ここは兄様の仕事場ですよ。
最近は俺が書類を任されていますけどね」
にこにこと説明してくれるアーサー。
「ここが…フィオリ様の…」
この部屋が、他国との国際的重要機密のやりとりに必要な書類を作り、貿易や国内事業展開を図るかなめの場所。
「本棚に本がたくさん…」
「ええ、この国の地理、歴史をはじめとした本や記録があるんです。ふふ、ほんの一部ですけれど」
この城は大理石でできているため、どこもが白く、美しい。
太陽の降り注ぐ爽やかな国らしく
この部屋も太陽の光がさんさんと降り注ぎ、明るく清潔な内装だった。
ソアの木のぬくもり溢れる書斎とは大きく異なる。
書類がたくさん溜まっていて、
絨毯がもふもふで…木材でできたソファやテーブルがあって、布の厚いカーテンもあって…暖炉もあって…
ここにはそんなものは一切なく、
整頓された机に
ツルツルの床、彫刻があしらわれた、これまた大理石でできた椅子やテーブル。
ガラスが天井まで伸びきった大きくて明るい窓、暖炉などはなかった。
そして、窓のない壁には本がぎっしり埋め込まれている。
部屋が白い分、
本の背表紙がこの部屋を彩っているようだ。
「一階に記録書などが保管されてるんですよ。
ハーシュッドの古代語で全て書かれているんですけどね。
まあ、そんなことより肖像画ーーっ!
チビたちダッシュ!
こっちにおいでーっ」
そして、窓のない壁のうちのもう一面。
そこに肖像画があった。たった、一つだけ。
そこには。
「えっ、フィオリさ…え?ティラ?」
フィオリに似た男性の、
けれど瞳が青と黄の両方ある男性像が描かれていた。
まるでティラシュアが大きくなった想像図。
「ガウウウーッ!」
「キャウ?」
「ふふっ、ティラが興奮してるー」
「エルディオ様は不思議がっておられますね。この方はフィオリ様とアーサー様のお父上ですよ。」
(ああ、この方が…本当に、フィオリ様に似てます…
青と黄のオッドアイ。
フィオリ様の瞳が青い理由が分かりました)
「フィオリ様に似ているでしょう?
ヴァイス様は剣術にも魔術にも、政治面でも手抜きしない完璧主義者でして…
そっくりですよ、お二人とも」
「むーっ…レミル、俺は違うと言いたいの?
阿保だから…」
「あ、いいえっ、まさか、そんなつもりはっ」
「いいんだよ、別にー、ふふっ、
いいかい?チビたち、
兄様や父様、レミルの賢さを見習うんだよ?」
「ガゥ?」「キュン?」
アーサーの言葉に首を傾げる2匹を見ている時だった。
バンッ!と音を立てて開いた窓。
ぶわり。
急に風が強く吹いた。
「っ!?」
「キャウン!」「ギャウウー」
「お早いご帰還ですね」
「あはは…兄様、どんな速度出してるんですか…」
バサバサバサッ
机の上に置かれた本のページが早くめくられていく。
2匹は体が軽くて一瞬飛ばされそうになり、
慌てて胸の中に抱いた。
「キャウ…」「ガウー」
怖かったのだろうか、胸に顔を埋める2匹。
「大丈夫よ、2人とも?わたしが守りますからね?」
それに。
とんっ、と軽い音を立ててベランダから入ってきたのは
「あなたたちのお父上よ?」
大丈夫だよ、という思いで声をかけると2匹はぴょんっと飛び降りてフィオリの元へ駆け寄った。
「帰ったぞ。」
「…王様…」
フィオリは足元にいる子どもたちをに気を配りつつ、
まっすぐにこちらへ歩いてくる。
あと2、3歩で手の届くところで止まる。
体格差を感じる。当たり前だが、視線は見下される。
でも、威圧感はなくて…
「お、おかえりなさい、王様…」
見上げれば、彼が笑った気配を感じた。
「ああ。ただいま。サラン」
「っ…はい…」
見つめているだけなのに、とても幸せで…
そっと伸びてくる手のひらに頰を寄せた。
すり、と撫でられると
大きな手は一度頭を撫でるように、髪をとくように、するりと肩へ降りていく。
とく、とく、と心の臓が音を鳴らす。
(…嬉しい、もっと…)
視線を外すこともなく、見つめ合う。
傲慢だろうか。欲張りだろうか。
そう思いながらも目で求めてしまう。
もっと、わたしにさわってくださいと。
「サラン」
ぎゅっと、抱きしめられた。
時が止まったように、けれども彼の体温を感じるられたのが一瞬のようにも思え、
背に回された腕が離れる前にサランもフィオリの背に手を回す。
「もっと、くっついていてほしいです…」
「…」
「…?」
「…サラン…、それは夜、でいいか?」
「え、あ、、あ…わ、わたし…」
口に出していたようだ。
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