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「それでは、我が子と、弟を紹介しよう」
フィオリの声とともに扉から現れる、1人と2匹の姿。
会場はわっと盛り上がった。
「獣族の子どもだ」
「獣化している」
「双子、なんて素晴らしいんだ」
「それに、アーサーがいる」
「今までどこに…」
「たくましくなって帰ってきやがったな」
ざわめきの中、子どもたちはキョロキョロと辺りを見渡しつつ、楽しそうにしていて、アーサーはどこかぎこちなく笑った。
(まあ、この子たちは人前でも緊張しないのですね…わたしは嬉しくて、恥ずかしくてドキドキしていますのに。
この子たちは、なんて堂々としているのでしょう、ふふ)
サランが子どもを腕の中に抱いて微笑んだ。
それからは会場の皆に挨拶をして回ることに。
1番先に向かうのは…
「サラン、ああ、綺麗だね」
「サラン、とても素敵よ」
「お父様っ、お母様っ」
サランの両親のもとへ。初めて子どもを交えて顔を合わせることになった。
「フィオリ王…あなたがサランを思う気持ちが
優しくて、芯があって、情熱的で、とても大事にしてくれているのだと…そう伝わってくるのです。
私はこの子の父親としてあなたを許したい。この子をどうぞよろしくお願いします」
「はい。我の命が尽きるまで」
そっとフィオリは頭を下げた。周りにいた古くからの顔見知りはフィオリが人の言うことを素直に受け入れるなど滅多にないためとても驚いていた。
さらに、獣族でもない、なんとも小さい人間に向かって。
だがフィオリに恥る様子はなく、むしろ堂々として、少し安らいでも見えた。
「そして、この子たちが…」
きゃっきゃと鳴くティラシュアとエルディオ。
「まあまあ、とても可愛いわ。瞳の色もとても綺麗」
「そうだね…サランも立派に母親、だね。初めまして、可愛い孫たち…爺だよ。ははっ」
「はいっ、お母様、お父様」
獣化姿のままの子どもを受け入れてくれたことにサランは安心して笑った。まだまだ話したいことがたくさんあるのに、という気持ちで親を見上げるサラン。本当は久しぶりの面会でもあるから抱きついてしまいたい。
その気持ちをぐっとこらえる。
パーティーが終わったら、またお話しにいきましょう
そう考えて。
「そう、そしてあなたがアーサー様、ですね」
「サランを助けてくださりありがとうございます。レミル殿も、アーサー様もサランの世話まで手厚くして頂きまして、大変感謝しております」
フィオリ、アーサー、レミルは、
あたたかな言葉と微笑みで包んでくれるソア国王夫妻に
心が落ち着くような感じがして、まるでサランと話をしているようだと思った。
(あれがソア国…)
(獣族の子どもも産んだぞ)
(とても華奢ではないか)
(連れて行くには十分な…)
(纏う雰囲気が良い民だ)
あの優しさで溢れるような柔らかな心根を持つソア国という存在に、そして獣族の子を産めるという異質な体質に
周りの者も目をつけたようだ。
(一度話をしてみたい)
(確かソアの王族はまだ未婚の子供がいるはずだな)
(どれ、サラン様とお話ししてみよう)
(我が種族の繁栄のために)
フィオリは同属である周りの渦巻く欲に気づき、ソア国王夫妻にそっと結界を張っておいた。サランには既に。先程はめた指輪にも仕掛けてある。
(レミル、アーサー)
(はい、王よ。今夜は油断などできませんね)
(お姫さまも御家族も…とても大切なので守ります)
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