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翌日朝方。
サランは欠伸をもらした。いい朝だ。昨晩の件についてはまだ理解できないことがあるのだが、サランは意気込みを新たにしようと思った。
(なぜ、お父様やお母様のお部屋が狙われたのでしょう…それに、エルディオが人の姿に変わったことも受け止めなければ)
上半身を起こしたサランは、隣に眠る子どもに目を向けた。1人は籠の中に。1人はサランに抱きつくようにしてベッドに横たわっている。
子ども用の服などなく、サランの衣服を着せている。そのためか、肩が露出している。
「朝方は涼しいでしょう?」
シーツをかぶせてやる。可愛い子ども。まさかあのエルディオなのか、何度だって疑ってしまう。
ティラシュアは丸まり、子犬のような姿。あの時見た、いや、今までサーシャの森の中で遊んでくれた夫の獣化した姿に似ている、見慣れた姿。
(フィオリ様は獣の姿にも、人の姿にもなります…この子たちも、自由自在になれるものなのでしょうか)
これは余談だが、この城内にある椅子やテーブルなどに彫刻されている生き物は狼や猫などではなくて、獣化している種族をモチーフにしているようだ。
獣族ならではの発想だ。
サランが考え込んでいると、
「サラン」
と扉越しに聞こえるくぐもった声が。
「はい、フィオリ様」
いつもならすぐに扉を開くフィオリだが、きっと昨日の事件があったために配慮しているのかもしれない。
サランはベッドから立ち上がり扉を開けに行った。
「おはようございます。フィオリ様…」
「ああ。おはよう」
どこか怒っているような、疲れたような顔をしているフィオリ。しかし顔を覗き込もうとすると抱きつかれる。
はあ、と頭にかかるため息。そのまま肩口に顔を乗せられた。すんすん、と匂いを嗅がれているようだ。
(ふふ、お疲れなのですね)
「…サラン、今日は何をするかわかっているか」
「はい。パーティー参加者の中にいらした親睦の深い方々とお話をする日です」
「その通り本来は…我とサランが出席する予定だった。
だが、サランは無しにする。待っていてくれ」
「…はい…あの、理由を聞いても?」
「…いや、仲間と……激しく語り合いがしたいと思ったからだ。へんな意味はない」
「…?、はい、わかりました。それでは、今日お帰りになられる来賓の皆様を見送りに参りましょう。その時まではお隣にいさせていただけますか?」
「ああ。もちろんだ」
その言葉と共に更に抱きこまれる。腕をフィオリの背に回し、サランは大きな胸に頬をすり寄せた。
その頃、廊下で朝食を運びにきたレミルは部屋から聞こえる話の中身にくすりと笑ってしまった。
(王よ、激しく語り合うとは本当ですか?
ふふ、先程は言葉を濁していましたが、あれは語り合いだけでは終わらないでしょうね…
昨晩にソア国王夫妻、サラン様、御子様の身に危険を晒した自分への罪と相手への殺意と嫌悪で溢れかえっておりますものね、本当に血の気の多い王ですね…)
レミルは心配事があった。
フィオリが怒り狂って獣族だけでなく城まで破壊するのではないかという建築面での心配が1つ目。
あの事件を起こした邪魔者が排除されて興奮が落ち着いた後でサラン様への爆発的な独占欲が生まれる恐れが2つ目。
そして獣化、人化共に変化出来るようになった御子様への対応が3つ目。
そしてそしてそれらの仕事を加算して、私やアーサー様に負担が回ってくるという心配が4つ目。
レミルはそっと目を閉じた。
面倒ごとが起こる予感に騒ぐ胸をそっと撫でて落ち着かせる。
(ああ、今日も天気が良いですね…)
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