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来賓の見送りと、サランの両親への別れを済ませたサランは王とは別行動をとり部屋に戻ることにした。
サランは足にフィットした柔らかな生地の靴を弾ませるように歩いている。
サンダルよりもこちらの方が肌心地が良いだろうと今朝フィオリから渡されたものだ。
ハーシュッド国の仕立て屋が特注で作ったものらしい。
(ティラシュア、エルディオ…)
子どもたちに早く会いたくて先を急ぐサラン。レミルが後ろから付いて来てはいるが、早く可愛い我が子を抱きしめたいという気持ちが高まっているようで早歩きだ。
ガチャリ
「2人ともっ」
「ギャウー!」
「キャウー!」
「あ、おかえりなさいお姫さま」
アーサーから子ども用の服を着せられているエルディオとそれを見ているティラシュアの元気の良い返事が返って来た。
「アーサー様、ありがとうございます」
「いえいえ。お洋服、交換できましたよ」
人の姿をしたエルディオはにこにこして洋服を握ったり持ち上げている。サランが微笑むとそのまま歩き出してサランに抱きついた。
「キャーーウ!」
「まあ、エル…あなた、歩けたのですか?素晴らしいです、今まで四つ足だったでしょう?」
「キャウ!」
「…もしかしたら」
レミルが口を開く。
「エルディオ様が今まで床に伏せておられたのは、獣化するために必要な魔力を溜め込んでいたせいかもしれませんね。人の姿と獣の姿を入れ替えることは御子様にとっては難しいことですから」
「そうなのですか」
「たしかに、俺も獣化するのはちょっとピリッとします」
アーサーも頷く。
「ピリ、ですか?」
「はい、集中すると体の中を魔力が巡るのですよ。小さな体でよく変化できたものです。
…本来俺たちは獣族。獣化のままでいることが1番生きやすいし、なんら問題がないのです。…でも。
エルディオは俺たちがみんな人の姿をしているから真似したのかもしれませんね」
「ギャウー…」
「キャウー!」
「ティラシュア…あなたも人になりたいの?」
「ギャウ!」
良い返事にサランは苦笑いをする。
もしかしたらこの子も10日以上寝込んでしまうのかと心配したためだ。
「きっと、ティラシュア様も姿を変えることができるようになると思います」
「チビたち、兄様の子どもだからね」
「ふふ、ではわたしはティラの応援をいたしますね」
「ギャウー!!」
「キャウー!!」
「俺も応援します!」
「ふふ、僭越ながら私も応援させていただきますね」
ふふ、とみんなが笑い合った。
しかし、このように楽しそうに笑い合う部屋がある一方で…
「死にたいのか貴様は」
「…っ」
笑みとはかけ離れ、とある男の殺意がビシバシと飛ぶ一室がこの城内にあった。
そこは来賓の間として用意された1階の部屋で、内装も綺麗に整えられているはずなのだが、今は1人の来賓者の腕からの出血で大理石の床が汚れたり、花瓶が割れているなどかなりおどろおどろしい事になっている。
その場を支配する者はフィオリであった。
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