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ひねくれ者の、
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「いーずみ!」
「あ?ああ、新木か。」
「こっわ!いかちーヤンキーかよ!ってかそろそろ上総って呼べよな〜」
「そういうの苦手なんだよ」
「あ、伊澄コミュ障っぽいもんね」
「うるせえ」
バイト終わり
あがりが被った新木と軽口をたたきながら帰る支度をする
何かと誰かを連想させる新木の隣は妙に落ち着く
犬っぽいんだけど犬種が違うというか…なんなんだろう
なんて考えているとガチャっと扉が開く
「お!ユズちゃん!今日こそ連絡先交換しよー」
「絶対いやですー、気安く名前で呼ばないで!」
珍しく威嚇している村前さんに驚く
誰とでも直ぐに打ち解ける彼女のこの反応は初めてだった
「あ、伊澄くん!ちょっと!!!」
「え、俺?あ、ちょ、待って」
「……」
腕を引っ張られてもう閉店を告げた静かなキッチンの奥へ引っ張られる
部屋を出る前
一瞬とても冷たく光った荒木の瞳が見えた気がした
「伊澄くん!気をつけてね!?」
「え、何が」
声は潜めてしかしとても興奮したように詰め寄られる
一体何に気をつけるというのだろうか
「新木くんだよ!あれは絶対に捕食者の目だから!!隙を見せちゃダメだよ!!!」
「捕食者…?新木も俺も同じ人間だけど」
「そういうとこ好きだけど今はぼけてる暇無いよ伊澄くん!」
ボケたつもりはなかったのだけれど…
「伊澄くんには翔太くんがいるんだから無防備な姿とか見せちゃダメだからね!?」
「う、うん???」
久しぶりに聞いた金井の名前に少しだけ戸惑う
「伊澄くん、女のカンは鋭いんだよ!」
「そう、なんだ?」
まだ頭に疑問は残っているがとりあえず頷いておく
俺も新木も男だけど…
俺はともかくあいつは別に同性に必要以上の興味は抱かないだろ
俺は、あの海の日から金井に合っていない
夏休み前でテスト週間というのもありお互い暇ではない
俺はいつも通りのバイト生活に戻り、あいつもあいつで今までの生活に戻りつつある
金井から何度か少しでもいいから会えないか
と連絡が来ていたが忙しいと言って断っていた
既に七月に入り、湿気っていた空気は夏の暑さに包まれかけている
連日日差しが強くカーディガンが手放せない俺には地獄の日々だ
夏だけでも北海道講座とかねーかな…
逃げていたことで更に俺は金井に会うのが怖くなっていた
もし次会った時にこの関係自体終わりにしようと言われたら
信用していない訳じゃない
そう思っても心のどこかでやっぱり本当に?とといを投げかける自分がいる
「伊澄くんわかった!?」
「あ、うん、ありがとう」
話の半分も聞いていなかった、とはいえず曖昧に返事をして別れる
荷物を持って裏口から外へ出るの扉の前では新木がしゃがみこんでいた
「おっせーよー伊澄!」
「あれ、いないから帰ったのかと思ってた」
「今日は一緒に帰ろう!ってか飲み行こーぜ飲み!!!」
「あ…」
あぁ、と言いかけて先程の村前さんとのやり取りを思い出した。
「悪い、そんな気分じゃない」
「えー、この間もそれだったじゃん!俺とサシ飲みはやだ?」
「そんな、ことは」
しゅんっと垂れた耳と尻尾が見える。
くっ、これじゃ俺が悪いみたいじゃないか!
「……わかった、少しだけな」
「やりー!さっすが伊澄!わかってる!!」
ガバッと抱き着かれて体勢を崩しそうになるのを堪える
離れるように背中をポンポン叩けば直ぐに離れる新木
ほら、新木のこれはただのスキンシップだ
別に心配することはない
金井に会っていなくて不安を募らせた俺と、金井を連想させる新木
俺は気づくべきだった。
裏口は人目があまりないだけで人が来ないわけじゃない
路地の方に見知った顔があったこと
そして、それを知ってか知らずか心底楽しそうに微笑む新木のことを
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