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氏原side‥₁
康明が、なんだかものすごく怒っている。
僕がいきなり来たのがいけなかったんだろうか。
クラスの打ち上げで、確実に部外者な僕。
勝手に、許可も取らず、目の前に現れて
康明はもしかしたら僕のいない空間でご飯を食べるということを楽しみにしていたんじゃないかって。
でも、だったらどうして僕を自分の隣に置いたの?
タバコを吸うからだなんて、適当な言い訳にしか聞こえなかった。
もちろんその場が変な空気になる前に話を合わせたけれど。
多分生徒たちは康明の違和感に気が付いていないと思う。
違和感といっても、僕に対する態度が少し冷たいだけでほかの生徒には何も変わらず、会話を楽しみ、
声を出して笑っているし。
ただ、僕と目が合わない。一向に。
こんな事、今までなかったのに。
どうしてだろう。
僕、何をしてしまったんだろう。
康明の気に障ること………。
…やっぱり来ない方がよかっただろうか。
隣の生徒に振られた話を適当に終わらせ、
耐えられない胸の痛みに思わず席を立った。
「ご、ごめんね。僕ちょっとタバコ吸ってくる。」
これ以上ここに居たら、たぶんそのうち泣けてくる。
生徒の前で、養護教諭が情緒不安定な姿を見せてはいけない。
無意識に服の上からガリガリと傷口をひっかいていたことに気付き、羽織に滲んだ透明な体液を隠すように右手で押さえると
…その手を優しく包み込むのは僕より大きくて骨ばった康明の腕だった。
「……俺も行ってくる。
お前らハメ外しすぎんじゃねーぞー。」
そのまま僕の顔を見ることもなくずんずん前に進んでいってしまう康明。
それでも腕をつかむ手はすごく暖かくて――。
僕にしか聞こえない小さな声で、
お前今日どうしたんだよ。と囁く声が聞こえて、
生徒の姿が見えなくなる所まで連れ出されると、どうしてか次々に頬を伝う涙を止めることができなかった。
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