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ひどく憔悴した藤隠をそのまま帰すことが出来なくて、今夜は泊まるように言い、僕の部屋に布団を敷いた。
藤隠は、この二日間、ろくな物を口にしていなかったらしく、凛が雑炊を作って出した。それを食べている間も、心隠さんを思い出すのか、時おり涙を流していた。
凛は、藤隠の話を聞いてる時に泣いていたけど、甲斐甲斐しく雑炊を作ったり布団を敷いたりしていたので、大丈夫なんだと僕は安心して見ていた。
でもそれは無理をしていただけのようで、凛と銀おじさんの部屋に入るなり、とても悲痛な鳴き声が聞こえてきた。鳴き声に混じって、自分が何も出来なかったことを悔やむ声も聞こえる。
銀おじさんが、一つ一つに相槌を打ってるのを聞いて、僕は安堵の息を吐いた。
「…あの人間…凛とかいう奴は、大丈夫かよ?今、下の部屋を盗み聞きしてたんだろ?」
「盗み聞きって…、探知の力だよ。凛は、気丈に振舞ってるように見えたけど、人一倍優しいから、絶対にすごく傷ついてるはずなんだ。だから心配してたんだけど…。銀おじさんが傍にいるから大丈夫みたい」
「ふ~ん…。あの人、人喰い鬼に慕われて、嫌とか思わないんだな…」
「凛は、心隠さんが本当はどんな鬼か知ってるんだから、嫌だと思うわけないじゃん。藤隠だって、本当の心隠さんを知ってたから、ずっと傍にいたんだろ?…藤隠も、辛いこと全部吐き出して泣いていいよ?僕が抱きしめてあげる」
「ばっ、バカ…っ!俺はもう泣かねぇ!さっきは、ちょっとパニックになっただけだ!」
「そう?それにしても、鬼の一族の対応早かったね。もう心隠さんの身体を燃やしちゃったなんて…」
「心隠は、罪を犯したからな。早く消し去りたかったんだろ…」
僕のベッドと並んで敷いてある布団に仰向けで寝転び、藤隠が目を閉じる。
僕も、ベッドの縁に腰掛けていた身体を横たえて、リモコンで電気を消して目を閉じた。
心隠さんの死は、翌朝に地下牢から出て家に戻った藤隠からの話を聞いた親族のおじさんによって、一族に知れ渡り、その日の昼には荼毘に付されたらしい。
一応、藤隠と数人の親族達で、簡単な式は行ったそうだ。
全てが終わり、心隠さんの骨を拾いながら、藤隠は『地獄に落ちた心隠は、どの鬼よりも強いんじゃないか』とふと思ったと言って、泣き笑いの顔をしていた。
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