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家に着いて少しすると、藤隠が来た。
藤隠はよく慣れたもので、玄関を上がると、僕よりも先にスタスタと居間に向かう。テーブルの傍に行くと、持っていた大きな紙袋を床に置いて、椅子に腰掛けた。
「よお。おまえ最近よく来るよな」
「いつも青藍にくっついてるあんたに言われたくない」
「ふんっ、俺と青藍は恋人だからな、当たり前だ」
天清が得意げに言って、勝ち誇ったように笑う。
藤隠は、思いっきり顔をしかめて、僕を見た。
「薄々そうかな…とはわかってたけどな。あんたが必要以上に青藍にベタベタしてたし。それに、断言してくれなくても、俺はあんた達の邪魔はしないよ」
「そ、それなら別にいいけど…」
ブツブツと呟いて座った天清と藤隠の前に、僕は冷たいほうじ茶を入れたコップを置いた。
「天清、藤隠とは喧嘩しないでよ。どう?藤隠、少しは元気になった?」
「まあな…。今あの家を片付けてるんだけどさ、心隠、結構いい着物を綺麗に置いてたんだよな。ほとんどは俺がもらうんだけど、これは椹木さんに渡して欲しい」
「え?凛に?」
藤隠が立ち上がり、床に置いていた大きな紙袋の中から、紫色の風呂敷に包んだ物を取り出した。それを畳の上に置いて、風呂敷を広げる。中のたとう紙も広げると、綺麗な藍染の着物が出てきた。
「わあ…綺麗な色だね」
「そうだろ?俺もそう思う。これだけさ、箪笥とは別の桐の箱に仕舞われていたんだ。その箱の上に【凛へ】って書いた紙がついてたんだよ。凛って、椹木さんのことだろ?心隠は、椹木さんの為にこの着物を作ってたんだと思う。だから、これは椹木さんが受け取って欲しいんだ」
着物を覗き込む僕の隣で、天清も「いいな、この色」と呟いている。
「触っても?」
「いいぜ」
僕は藤隠の許可をもらうと、そっと着物に触れた。
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