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作品
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「あ、そうだ俺ちょっと明後日帰りが遅くなるからね」
帰りの車中で兄さんが言った。
「飲み会とか?」
「そ!……とは言っても俺はあんまり飲めないけどね」
「気をつけて行ってきて」
兄さん、帰ってこないのか。それなら、お肉もう少し少なくても良かったな。
窓の向こうに流れる景色をぼんやりと見つめて、そして心の奥底でふつふつと湧き上がる衝動を抑える。
もうやらないって決めたんだから、やっちゃダメなんだ。
隣でご機嫌にも鼻歌を歌う兄さんをそっと横目で盗み見て、目を閉じる。この平和を壊したくなんてないもの。
兄さんとずっと、仲良くいたいもの……。
なんて思ってた癖に、習慣には抗えないでしょ。
僕の心は本当に弱すぎて笑える。
僕は出来上がったばかりの作品を新しい透明の棚に飾って風呂へ向かった。
「足りないな」
ふと呟いた言葉は心の奥底で、僕にさえも気づかないように隠れていたものだった。
足りない?足りなくなってしまった?久しぶりの感覚。初めは虫で次はネズミ、今は猫で次は……人間?
最後の言葉に心の奥底がざわざわとして、興奮する。僕、ついに、作っちゃうの?誰で?汚いものは嫌だ。あぁ、でも試して見たい。どんな風になるのか……
「ただいま〜」
「ちょ、先輩」
僕の理性を引き上げてくれたのは、兄さんと、知らない男の声だった。汚れた服だけ取り替えてパタパタと玄関へ向かえばそこには、なぜか酔い潰れた兄とそれを支える知らない男の姿。
「おかえり、兄さん」
兄さんに触れる男の手を払いのけると、兄さんを抱き上げる。
「あぁ、兄がお世話になりました。もう帰っていいですよ」
「あ、はい……それじゃ」
パタンと閉まるドアを見てため息を漏らす。兄さんの知り合いに失礼な口を利いてしまった。でも、なんだかもやもやしたのだ。兄さんを連れてそのまま兄さんの部屋のベッドに下ろす。
「んぅ……もう飲めないぞ〜」
僕もベッドに腰掛けて、兄さんの髪をそっと撫でる。すると、兄さんは目を開いて僕の頭を撫でた。
「あれー?カガリがいるぞ?あはは〜迎えに来たのか?」
酔っ払って状況がまだ分かってないのか。
「違うよ、兄さんは帰って来たんだよ」
そう言って、その大きな手に頬をすり寄せる。温かい。兄さんは「そうか〜」とかまだまだボケてるようだった。
「んー……」
突然苦しそうな声を出す。あ、ベルト外してやらなきゃ……。
かちゃかちゃと音を立ててベルトを外す。
「ふぅ……ん、カガリ?夢?」
やっと頭が冴えて来た様子の兄だが、まだ正常ではないらしい。兄は僕を抱きしめて、おでこにキスをした。
これでも抑えていたんだ。
作品を作るとき、いつも興奮して堪らないのを一人で慰めてた。
兄さんが知らない男といるのが嫌で腹が立って、兄さんを僕のものにしたくなった。
頭を撫でられたとき、そのままキスしてしまいたいほどに心地よかった。
でも、全部抑えてたんだ。
兄弟だから。
なのに兄さんは、そんな僕の努力を無視するんだね。いいよ。僕もやめるから。
兄さんは夢だと思っていれば良いよ。
これから起きること全部ね。
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