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初日
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「初日から倒れんなよ」
「ん、大丈夫」
「今からでも少し寝とけ」
バイトの時間は紘に言っているからすでに把握されている
14:00からのバイト開始時間まではまだ時間があった
昨日緊張で眠れなかったのを知っていた紘は優しくそう言う
「いや流石に」
流石に眠れない。
夜でさえ眠れなかったのに朝からなんて尚更無理
「大丈夫か?」
支度をしていた手を止め近づいてくる
目の前まで来ると前髪を上げ、額に手を当てられた
「…ひろ」
「ん?」
額に当てられていた手を避ける
代わりに、ゆるゆると抱きついてみた
そっと背中に手を回す
自分の手が一周しないくらい、そっと服を掴むくらいの弱い抱きつき方
「どうした?」
怖い。
今更行けないなんて事は許されないけど、気持ちが折れそう
行かないで。
側にいて大丈夫だって言っていて欲しい
何ならバイト先にもついてきて欲しいくらい。
「………、…何でもない…」
「大丈夫。
律なら大丈夫だから」
何でもないって言ったのに。
抱き返してくれた背中が温かい
「…ひろ」
「どうした?律。」
そんなに優しく俺の名前呼んで何がしたいの
泣きそうになる心を奮い立たせて頭を横に振った
「…いってら」
「強がりが見え見え何だよ。
でもそろそろ行かねーとだな」
大丈夫、何かあったらすぐ連絡しろ。と頭を包むように優しく撫でられた
「律、好きだよ」
なぜ今それを言う。
タイミングがいつも分からない。
言い残して背中から手が離れた途端、寂しくなる
それでも何も言い出せずに、ぎゅ。と拳を握って耐えた
一人になった部屋は寂しくて、静かで、緊張していた俺の神経を更に刺激してくるようだった
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