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キス
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「…おいおい。万年奴隷野郎の本性はドマゾのホモ野郎かよ… 笑えねぇ、っつうか 普通に引くわ」
呆然とすること数秒。
声が引き攣りそうになるのを耐えて、吐き捨てた。
癖のように悪態は出るものの、何分調子を狂わされたもので、こいつの心を砕ける様な一言が見つからない。
腹は極限まで煮えくり返ってるってのに。
「ホモだと怖くてそばに置けない?」
「あ?」
「ふふ…だって偉主郎君、僕にキスされてから震えてるじゃないか」
かっと頭に血が上った。
衝動のままワイシャツの襟元を掴み上げれば、律儀に首元まで止め直されたボタンがひとつ、ふたつ、足元に散らばった。
軽い体が持ち上がりそうだってのに、天使は弾けたボタンを目で追うのみで、全く動揺をみせない。
泣かせてやる気でいたのに、何故こっちが必死にならなきゃいけないのか。
全く、こういう所が気持ち悪いっつうんだ。
「馬鹿なこと抜かしてんじゃねーぞ。… 大体あの程度で何だよ、今時中学生でもあんな拙ぇキスしねぇから」
乳臭い面した童貞野郎が、無理やり唇押し付けたくらいで調子に乗りやがって。
本音は今直ぐ手を上げたいし。この白い頬を殴り飛ばしてやりたい、何ならスリル満点屋上ダイブでも強制させてやりたい所だが、停学大学騒ぎを起こすくらいなら高校に通う意味もない。
つうか俺は極々普通の人間だから。
至って普通の育ち、喧嘩狂いでもヤンキーでもない、気に入らない奴をねちっこくイジメて泣かせたいだけ。
天使君が泣き顔で助けを乞うのが見たい、
ただそれだけのクズですから。
「ホモでマゾならレイプもご褒美だよなぁ…奴隷君から飼い犬君へ、昇進祝いでヤっちゃうか。俺がお前で勃ったらの話だけど」
「偉主郎君って。普段はクールで寡黙なのに、怒ると口数増えるんだね」
「…っ 黙れ」
「ところでそろそろ離して欲しいなぁ… 首が痛いよ」
「調子乗んのも大概にしろ、本気で殴られてぇのかよ」
「だって…」
皺になってボタンを無くして、布切れと化したワイシャツに、天使はただ苦笑を浮かべる。
更に、胸ぐらを捻り上げたままの腕へそっと両手を添えてきた。
「こんなに近くで罵られると ゾクゾクしちゃうよ。
ホモで、マゾで、心底君に惚れてる男だって分かるなら、もっと警戒しなきゃ駄目じゃないか… ね、偉主郎君」
ねっとりと向けられる視線が既に危なげだ。
色素の薄い瞳は異様な熱を孕んでいる。
男が男に、欲情してる。
「お。お前ホントに気色悪… んむっ!」
再び柔らかい唇を重ねられ、俺の罵声は遮られた。
口内で、興奮したこいつの熱い舌が歯列をなぞる。
抗しようと必死になって口を開いた隙に、器用に捩じ込まれた舌が、これまた丁寧に粘膜を撫でる。
「ばっ… やぇ ろ… ンん゙っ…」
仔犬みたいなあどけない顔で 大人のキスも出来ました、なんざ聞いてない。
時々触れる肌が燃える様に熱くて、俺の方まで火照ってくる。絡め取られた舌から じわぁ、と唾液が溢れ、口端から零れ落ちた。
シャツを握っていた手で容赦なく首を絞めても、舌を噛んでも、こいつは止まらない。
視界の歪む目で睨め付けても、嬉しそうに微笑むだけ。
イカれてる
「は、ぁ.. もっ、頼… んん…ンぅっ!」
延々と、湿った猥音が屋上に響いている。
口内を滑る舌が、上顎を通る。でこぼことした硬口蓋を擽られると、堪らず膝が震えた。
すかさず引けた腰を手繰り寄せられ、触れるか触れぬかの感覚でスラックス越しの中心を撫でられて、とうとう、下腹部に熱が集まり始めた。
やばい くそ
ふざけんなよ… 何で俺が、
何で俺が野郎とのキスで興奮しなきゃならねぇんだよ
あー でも、駄目だ
頭真っ白んなる、
何も考えらんねぇ
だって、もうこんなの、仕方ねぇだろ
何も 考えらんねぇ ほど、き────
「ン、 ぶはっ.. ! ゲホッ… はっ.. はぁ …!」
おぞましい事実を自覚するか、しないかの瀬戸際で、ようやく奴の唇が離れた。ぽってりとしたそれは、互いの唾液で艶やかに光っている。
肌蹴た胸元、乱れた髪、諸々相まって、
あどけない天使が不似合いな色気を醸していた。
俺は、冷たいコンクリの壁に火照った身体を預けつつ、冷静を取り戻したさに、二本目の煙草に手を付けた。
手が震えて、中々火が付かない様を、天使は相も変わらぬ笑顔で満足そうに見つめていた。
「クソッ..!死ね、ホモ野郎」
「ふふ。目ぇ潤んでるよ、偉主郎君」
「うるせぇ!!
黙らねぇとその緩過ぎる口まつり縫いすんぞ」
「こ、こわいなあ」
こいつとのキスが、
野郎とのキスが、
腰砕けになるほど気持ちよかった、なんて
俺は、死んでも認めたくなかった
✕ ✕ ✕ ✕
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