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脳が、総てを放棄する
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「番、解消ね」
身体を離した男は、おれの目の前で、決別の意図を持ち、手を振った。
魂が抜けたように、呆然と座り込むおれに、別の男が手を伸ばす。
意識を確認するように、パンパンっと頬を叩かれたが、おれは、なんのリアクションも出来なかった。
「こんなん抱いても詰まんねぇじゃん」
不満を口にする男に、番であった男は、ゆるりと腰を上げた。
おれに背を向け、仲間の肩を、ぽんっと叩く。
「近いうちに、ヤらせてもらえよ」
耳打ちをするように顔を寄せながらも、音量を落としていない声は、おれに筒抜ける。
「どうせ、発情期来たら、誰でもよくなんだし……」
肩越しに振り返った侮辱塗れの男の瞳が、おれを一瞥した。
心が、冷えた。
身体が、固まった。
脳が、総てを放棄した。
「そうすっか。やっぱ、多少なりとも抵抗された方が萌えるしな」
「ゲスいな」
「そう? 普通っしょ」
頭の上で交わされる会話をおれの脳は、理解しない。
「また、来るね?」
おれの頬を叩いた手が、再び降りてくる。
くしゃっと頭を撫でられる感触は、おれの背筋を凍らせただけだった。
空っぽになった心は、涙すら出さなかった。
ここに居たら、おれは、アイツらの玩具になる。
真っ黒に汚れた手を、心の中に挿し込まれる。
無遠慮に、ぐちゃぐちゃと掻き混ぜ、真っ白な手が出ていった。
幸せな感情をすべて捥ぎ取っていった。
心の中には、手から剥がれた汚れが残り、所々が黒くくすんだ。
悲しさや後悔、寂しさだけが胸に巣食った。
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