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消せない懸念 < Side夏野
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「ただいま」
いつもより何トーンも暗い声で、帰宅を告げる那須田に、視線を向けた。
リビングに入ってきた那須田は、居心地が悪そうに瞳を背ける。
那須田のほんの少しの動きで、ぶわりと香るΩの匂い。
俺は、眉根を寄せ立ち上がった。
するりと、那須田の肩口に顔を寄せ、匂いを嗅ぐ。
頸を痺れさせるような、強烈な香りが、鼻腔を突き抜ける。
「Ωを抱いてきたのか?」
俺に、那須田を咎める権利など微塵もない。
那須田は、女でもΩでもない。
列記とした男だから。
普通に考えれば、抱かれる側の人間ではなく、抱く側だ。
男に抱かれるコトに、全く抵抗がない訳じゃないだろう。
誰かを抱きたいと、突っ込み犯して、欲望を発散したいと思ってしまうコトだって、無いとは言い切れない。
女やΩに心を揺さぶられても、なんのおかしさもない。
責める権利などないとわかりながらも、腹の底がじわりと熱くなった。
ストレートに問う言葉に、那須田は、俺の身体を手で押し退け、頭を振るった。
スーツのジャケットを脱ぎ、ダイニングの椅子の背に、ふわりと掛けた。
那須田は、俺の首に両腕を回し、甘えるように抱きついてくる。
先程の匂いは、薄らいでいた。
「薄まりましたよね? ついているのは、スーツの上着、…上辺だけです。抱いてないって証拠になりますよね?」
不安そうな瞳で俺を見やる那須田に、寄せた眉根を解けない。
それは、那須田に対する疑念ではなく。
あんな些細な香りに、身体が、心が急き立てられたコト。
あの香りは、確実にΩのフェロモンだ。
俺は、那須田に絡み付かれたままに、椅子の背に掛けられているジャケットを手にする。
那須田は、俺の挙動を止めたりはしない。
俺の首に腕を回したまま、諦めたように肩口に顔を埋めてくる。
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