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《凛》
ひなが、おっかなびっくり靴を脱ぐ。
「おじゃましまー、ひぇ!なんだ!これ!!」
「…そこ、板が腐ってるからそっとね。」
「…わかった。」
「なんつーか…その…」
辺りを見回して、ひなが言いにくそうに言った。
わかるよ、ひな。
ボロいというか、あばら家というか…。
立て付けの悪い戸、シミが浮いて崩れそうな壁。
雨漏りまでしてたら、そりゃ引くよね。
僕は、わざと明るい調子で、
「来春、ここ建て壊す予定なんだって。
だから、それまでの間。
その分、安く借りられたよ。
それに、長屋にいるのうちだけだし、近所もいないから気楽だし。」
うん、嘘は言ってない。
「そ…っか。うん、物は考えようだな!
あ!それよっか、おまえ体は?」
「大丈夫。
先生が新しい薬、くれたから。
薬が合って、調子いい。」
ひなは、明らかにホッとしたよう。
「そっか、そっか!
さすが神原先生だな、うん!
でも、具合悪くなったら、俺か和也さんに言うんだぞ?」
「心配性。」
「おまえが何にも言わねーからだろ?」
軽くひなが睨む。
心配性…僕が具合悪くなるのしょっちゅうなのに。
「そもそもなんで…何笑ってんだよ?!」
「言わない。」
「言え!こんにゃろ!」
「言わない。」
「また、笑ってる…。」
ひなが本格的に、拗ねる。
言わない。
…言っちゃったら、泣きそうで。
引っ越し先…3回目からは、教えてなかった。
……幼なじみが引っ越して、疎遠になるのは良くある事。
だから、しょうがないって…。
自分に言い訳して、ひなにも、言い訳の余地のこしたのに…。
でも……ひなは探してくれた。
ひなは、近所の人に徹底的に聞きまくって、それでもダメだとわかると、スーパーやコンビニ回って…ひなが苦手な二ノ宮さんにまで頼み込んで探してくれた…。
それも二回…。
今度の引越しも、僕、二ノ宮さんに頼んだんだよ?
ひなが探しに来ても、教えないでって。
二ノ宮さんは、ため息吐いて、
「なにが凛君にとって必要なのか、私が考える。」って。
…二ノ宮さんは知らないんだ。
僕とひなを、単なる、仲の良い幼なじみとしてしか見てない。
ひなにしてみれば、その通りかも知れないけど、
でも…
……でも…僕は……最近おかしいんだ…。
ひなの事、…単なる幼なじみとして……見られなくなってる…。
もっと…一緒に居たい…
もっと…一瞬でもいいから…触れて欲しい…
もっと…もっと…って…。
男同志…なのに
ほんとに…僕…おかしい……。
誰にも言ってない…僕の秘密。
言える訳ない…よね…。
こんな……邪な感情。
それに僕は…汚い。
……汚いんだ。
………言えるわけ…ない……。
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