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廊下に控えていた二人の使用人が、重厚な扉をそれぞれ左右へとゆっくり開く。
少しざわついていた大広間の中がピタリと静かになり、皆の顔が、一斉にこちらを向いた。
注目されることに慣れていない俺は、瞬時に固まって動けなくなる。
だけどアルファムが、「カナ、俺が一緒だ」と優しく囁き、繋いだ手を揺らすから、俺の緊張が解けて足を前に踏み出すことが出来た。
アルファムと並んで、一歩また一歩と皆の中を進んで行く。
俯いてしまいそうになる顔を何とか上げて、真っ直ぐ前を見る。
前を見てはいるけど、周りにいる人達の顔を目の端で捉えてしまう。
笑顔で好意的に見る者や、物珍しそうに見る者、興味が無さそうな者もいる。
同性婚が認められている世界とはいえ、中には納得しかねる者もいるのだろう。
緊張で少しパニックになっているせいか、頭の中で色々なことを考えてしまう。
でも、一生に一度の晴れの日なのだから、アルファムと共に歩む幸せな未来だけを思い描こう。
そう思って顔を上げるけど、緊張と周りのプレッシャーから、また俺が俯きそうになったその時、「カナデ…」と小さく声が聞こえた。
ふとそちらに視線を向けると、サッシャとレオナルトが、笑顔で俺を見ている。
その後ろには、同じく笑顔のミケとナジャが。
「おめでとう」と口パクしながら、満面の笑顔を向ける彼らを見て、俺の中がすぐに幸せで満たされる。
全ての人に祝ってもらいたいとは思うけど、近しい彼らが心から祝ってくれることが、本当に嬉しい。
彼らと通路を挟んだ反対側を見ると、そちらには、月の国のシルヴィオ王や風の国のバルテル王子、山の国の王が並んでこちらを見ていた。
無表情の彼らがどう思ってるのかよくわからないけど、俺を連れ去ろうとした時のような嫌な感じはしない。
渋々この式に参加しているのかもしれないけど、来てくれたことに感謝して、俺は再び目の前に近づいた玉座とその隣にある椅子を見た。
一段上がった場所にある二つの椅子の間に、執事のホルガーが立っていた。
白く丈の長い上着を着て、手にはまるで炎のような赤い大きな石を持っている。
俺が不思議そうにその石を見てると、アルファムがそっと教えてくれた。
「あれは炎の国の神が宿ると言われている石だ。この国の王族の婚儀の時には、あの石に永遠の愛を誓うのだ…」
「へぇ…」
俺は小さく頷いて、もう一度石を見る。
確かに神様がいると言ってもおかしくないくらいに美しく輝いている。
俺が肌身離さず、今もつけてる腕輪とペンダントの石と同じみたいだ。
俺はとても神聖な気持ちになって、じっとその赤い石を見つめた。
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