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城の外に出るまでに数人の使用人に見つかったけど、いつものよう中庭に行くものだと思われたようで、特に見咎められはしなかった。
アイリスとレニに会ってしまった門は、いつも内側から鍵がかかっている。
だから門番もいなくて、俺はよくこの門から城を抜け出て街に遊びに行っていたんだ。
俺は、こそこそと物陰に隠れながら門の側まで行き、人がいないことを確認すると、一気に門まで走った。分厚い木の扉についた閂を抜き、マントを頭から被って素早く門をくぐり抜ける。
「はあ…どこに行こう」
上手く城を出れたのはいいが、行く宛てがない。
もっと市中に出歩いて、顔見知りを作っておけば良かったな…ととぼとぼと歩き出したその時、俺のお腹が盛大に鳴った。
「食欲ないのに…減るものは減るんだ…」
俺は、お腹に手を当てて、ある場所へと向かう。以前に街を探索していた時に、いい雰囲気の店を見つけていたんだ。
城から五百メートルほど進んだ所に、その店はあった。
黒髪が見えないように深くフードを被り、そっと店の扉を開ける。
すぐに可愛らしい女の子が寄って来て、「何名様ですか?」と聞いてくる。
「あ、一人…です」
「お好きな席へどうぞ」
にこりと笑う女の子に小さく頭を下げて、大きな窓の側の席に座った。
机の上に置いてあるメニューを見て、プリンに似たデザートがあることに少しだけ気持ちが上がる。
水を持って来た女の子に注文をすると、俺は頬杖をついてぼんやりと窓の外を眺めた。
ーーそろそろリオが俺がいなくなったことに気づいてるよな。絶対に街にも捜索に来るよね。ふらふらと歩くより、ここにいた方が見つからないかな…。当然、アルにも知らせるよね。めちゃくちゃ怒られるだろうなぁ。でも、怒られるよりも、アルがあの子と会う姿を見る方が怖い。
はあっ、と盛大に溜息を吐いていると、いきなり「悩みごと?」と声がした。
驚いて顔を前に向けると、向かい側の席に見知らぬ男が座っている。
「だ、だれ?」
「あ、ごめんね?勝手に座って。店に入るなりすごく綺麗な君の横顔に引き寄せられてさ。近くで見たくなったんだよ。君、本当に綺麗だね。君にそんな顔させたくないな。悩みがあったら話してよ。すっきりするよ?」
「はあ……」
笑顔で話す男を見て、俺は間抜けな声を出す。
ーーこれってナンパ?え?俺、男だけど。それにフードを被ってるから顔がよく見えてないと思うんだけど、綺麗ってなんだ?何かの詐欺?
「あっ、その目。疑ってる?俺はすごく真面目な奴だよ?俺の名前はルート。俺、君のことすごく気になるなぁ。ねえ、暇なら俺と一緒に過ごさない?君の名前教えてよ」
男のあまりのしつこさに困って、店を出ようと腰を浮かしかけた時に、注文していたデザートが運ばれてきた。
せっかく作ってくれたこれを食べないで出るのも悪い気がして、俺は仕方なく座り直す。
手を合わせてスプーンを持つと、また男が喋り出した。
「顔だけじゃなく食べ物まで可愛いんだね。甘い物が好きなの?」
俺は、辟易しながら頷くと、プリン(に似たデザート)をすくって口に入れた。
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