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* Scent.2 *
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「よければ名前を教えて欲しい」
「……立花です」
その台詞は助けられた自分が言うべきなんじゃないのか、と戸惑いもした。
不義理なのは承知しているけれども、下の名前だけを口にする。
養子の立花を快く思わない義母に、外で不用意に包海の名前を出さないで欲しい、と何度も叱られたから、それが自然と身についていた。
「素敵な名前だね。綺麗な君によく似合う」
素敵、綺麗と恐らく自分に向けられたらしい言葉に、立花は困惑と気恥ずかしさを混ぜた瞳で、男の顔を見上げた。
オメガに対する欲を一切映さないサファイアブルーの目とかち合うと、咄嗟に逸らしてしまった。
──僕だけ期待してて……バカみたいだ。
立花はもう一度頭を深く下げてから、大きな建物のほうへ夢中で走った。
あのままアルファの匂いにまとわりつかれていたら、抱いてください、とすがりついていたかもしれない。
もし迫られたら、間違いなくあの男とセックスをしていた。
本能に縛られてヒートを起こすアルファを、立花は心の底で見下していたが、自分だってそれを非難出来ないくらいに浅ましい。
彼は立花がオメガだと気付いているはずだ。発情していることも。
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