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犯行予告
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なんだかんだで夕方になり、ボスザルが夕飯の準備にとキッチンに入る。
冷蔵庫を物色し、ある物で何か作れないかと考え込む姿はどうみても主婦そのもので、色んな顔を持ってるなぁと俺は密かに感心していた。
喧嘩が強くて、チームのボスにもなれちゃうようなカリスマ性もあって、尚且つ料理もお手のもの。
加えてイケメンだし、神様はどんだけのものをこの人に与えているんだと。
それに比べて俺なんかチビだしチキンだし普通男子だし、喧嘩なんて論外、カリスマ性なんてナニソレ美味しいのときたもんだ。
やっぱり、釣り合わないんだよなぁ。
せめて大魔王みたいに綺麗な顔でもしてたら救われたのに…。
献立が決まったのか、調理を始めたボスザルにじっと視線を注ぐ。
定位置であるソファーの上に体育座りをし、しばらくしてから俺は膝に顔を埋めた。
釣り合わない、やっぱり。
俺なんかの何がいいのか、いまだによくわからない。
泣き虫だから?
弱いから?
それだけ?
だったら、変わりなんていくらでもいる。
俺にしかない長所というか、魅力ってあるんだろうか。
そんなもの、考えるまでもなくノーだった。
「暇なら手伝うか」
キッチンから不意にボスザルの声が届く。
なんだかとんでもなくブルーに陥っていた俺は、その隣に立つ事にすら抵抗を感じて、緩く首を左右に振った。
何でだろう、何で俺なんだろう。
そんな事、考えたってわかるはずもないのに。
気付けば、眠いのかと、隣にボスザルがいた。
「祐介?」
「…何でもないです」
聞かれてもないのにそんな返事、何でもありますって言ってるようなもんだ。
優しく頭を撫でられて、俺はたまらずに抱き着いた。
「何だよ、どうした」
あ、タバコの匂い。
香水つけてないのに、なんかいい匂いもする。
同じ男なのに、何でこんなにも体格差があるんだろう。
首根に腕を回して、鼻をすり寄せる。
今のこれって、甘える、になるのかな。
そんな俺に、ボスザルも何も言わず黙って髪を鋤いてくれる。
今なら、自分からキスも出来そうな気がして、そっと体を離してボスザルの顔を視界に写した。
途端に襲う羞恥。
相変わらずなんとゆうイケメンなんだ。
整った顔を間近でまじまじと見てしまった俺の心臓が悲鳴を上げた。
「しねぇのか」
「え、…」
目を逸らそうとした瞬間、ボスザルが自分の口をトントンと指で弾きながらそんな事を言う。
一気に顔面大火事。
でも、ここは…っ、ここはいっときたい!!
ぎゅうっと目を瞑り、顔を近付ける。
それから、ちゅっと、音も立てずに軽く唇を押し当てて、俺はすぐさま光の如く自室に駆け込んだ。
うおおぉぉー!!!
やったよ!!
頑張ったよ俺!!
だがしかし恥ずかしい!!
し、死ぬ……っ。
「…やり逃げかよ。参るな」
そんなボスザルの悲痛な呟きも知らないまま、それから輝彦さんが帰るまで、俺はずっと布団の中でだんごむしになっていた。
夕飯時。
漸く死にそうな程の羞恥から立ち直り、ボスザルと対面してご飯をつつく。
会社から帰宅した輝彦さんは、ボスザルが用意した夕飯にもあまり手を付けず、明日から始まる出張の準備の為か自室に籠りっきりだった。
明日から二人っきりなんだよなぁ…、と、思わずお箸をくわえたままぼーっとする。
てかさー、今日俺ゲーセンから一人で帰ったんだけど、大丈夫だったのか。
や、大丈夫だったから今ここに無傷でいるんだけど、ボスザル的には大丈夫だったのかな。
いつでも傍にいるとか言った矢先に一人にさせるんだもんなぁ。
ボスザルもあんまり危機感持たないタイプなのか。
いやいや、それってかなり不安になるんですけど。
「なあ」
「は、はい…」
「また何か考えてんだろ」
ぼうっとしたまま夕飯に手を付けない俺を見て、ボスザルの手が止まる。
慌てて何でもないですと手を動かすも、納得できないのか食い下がられて。
仕方ないからもごもごしながら聞いてみた。
「アイツ、尾行うまいんだな」
「…は?」
「真城、覚えてるか」
確かモヒカンの…。
「お前がこの部屋を出た時からずっとお前の近くにいた筈だ」
「え、え…?」
気付かなかった。
ぽかん、と口が開く。
「試しにな。現実的に考えて、俺がずっとお前の傍にいてやれるかって言や、ノーだ」
「…ですよね」
「かと言ってお前を一人にはしねぇ。だから今日は真城に試行させた」
つまりそれは、ボディーガード的なアレですか。
「だからお前を置いて出掛ける事もできたし、先に帰ったのもその為だ」
「…………」
なんとゆう…。
じゃああの時帰ったのは、別に拗ねてたりしたわけじゃなかったんだ。
そうか。
あの訳のわからん勉強会も無意味だったんだな。
や、あれはいかなる場合においても無駄以外の何者でもないけど。
くそう、何がバナナだ…。
「祐介」
「は、はい」
テーブルに両肘をつき、真向かいに座るボスザルに突然じっと見詰められて顔が熱くなる。
その目付きがとんでもなくやらしかったから、見詰め返すなんて出来なくて。
誤魔化すようにご飯を口に入れれば、低い、けれども艶っぽい声で、ボスザルは言った。
「明日の夜、お前を抱く」
ぶほっ、と口から米が飛散した。
「ごほっ…、う、ぇっ…?」
な、ななななんと!?
いきなり何を言うんだこの男はっ…!
赤面通り越して青くなった。
「今日のアレ、誘い方は別として、お前が俺を誘った事に違いはねぇ」
「いやいやいやいやままま待って下さいっ!」
アレはなんて言うか、ほらっ、ね、拗ねてると思ったから慰める的なアレですようん!
浮気防止的な意味も含めてね!
「さ、誘ったって、あの、べべ別にえっちを誘ったわけじゃっ、」
「バナナやらこけしやら、それが何を意味するかお前もわかってんだろ?」
「し、知りません!とりあえずハルさん達が言ってたから使っただけでっ、あの、」
「そんなもん、意味もわからずあんな言葉連発したお前が悪い。俺には無関係だ」
ひいいぃぃー!!!
「意味、教えてやろうか」
ニヤリと笑うその姿に、半泣きになりながら無心で首を横に振る。
いいです知りたくありません。
しかし、そんな俺にも構わずに、ボスザルはその言葉を恥ずかし気もなく口にした。
もうあの三人はまとめて肥溜めにでも落ちて溺れ死ねばいいよ。
てか、俺が死にたい…。
過去最大の羞恥に襲われながら、俺は椅子ごと真後ろに倒れ込んだ。
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