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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
エピローグ9
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「先にこの上ない幸福をくれたのは、お前なのだ。ならば、今度は私が全力でお前を幸せにする番ではないか」
「……そ、んな、」
貴方に幸せなんて、あげてない。僕が他人に与えられるものなんて、良くないものばっかりだ。
そう言いたいのに、やはりうまく言葉が出てこない。色々な感情がないまぜになった瞳で王を見れば、炎を孕んだ金の瞳がそこにあった。その瞳の炎のあまりの温かさに、少年はとうとう無意識に、ぽろりと言葉を零してしまう。
「…………いいの、かな……」
か細い声が少年の唇から漏れ出た。その小さな呟きに、果たして王は何を思ったのだろうか。
「……良い。許しが必要なのであれば、私が許そう。贖罪が必要なのであれば、私が償おう」
跪いたままの王が、これ以上ないほどに愛情に満ちた、優しい表情を浮かべた。
「愛している、キョウヤ。お前が自分の気持ちに気づけるまで、私はずっと、永遠に待ち続けよう。たとえお前の答えを聞けぬまま死を迎えたとしても、後悔はない。言葉にし尽くせないほどに、心からお前を愛している。だからどうか、愛するお前の口から、お前の言葉で、私の誕生を祝ってくれぬか?」
何処かから、綺麗な鐘の音が聞こえる。同時に窓の外で歓声が上がるのが、耳に届いた。
これまでの年が去り、新しい年が誕生したのだ。それならば今この瞬間が、この王が産声を上げた時なのだろう。
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