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純真メランコリー 8
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基礎と筋力強化に絞った雨の日用のトレーニングで、ここのところ部活は通常よりも少し早く終わる。
無人の学生ホールで、颯斗は降り続く雨を窓から眺めながら綾世を待っていた。
あの後、綾世は生徒会室への渡り廊下を通らなかった。
正面玄関脇の応接室を覗きに行っても人の気配はなく、教室に行ってみてもその姿はなかった。
念のため生徒会室にも足を運んでみたけれど、やっぱり綾世は来ていないらしい。
まぁ、いつもここで落ち合う時間にはまだ少し早いし……待っていれば、そのうち来るか。
そう思い、貸切状態の学生ホールのベンチに横になった。
「颯斗!」
突然名前を呼ばれて目を覚ます。
いつの間にか眠ってしまっていたようで、ホール内はすでに薄暗くなっている。
「…綾世…さ…ん」
入口に立つ人影は逆光で顔の確認が出来ないのだけれど、頭が小さく手足が長いマネキンの様なスタイルで綾世だとひと目でわかる。
「綾世さん。何処に居たの?探したけど見つけられなくって…」
「あぁ…。ちょっと寮に荷物取りに行ってた。急に家に帰らきゃならなくなって、外泊許可取るのに手間取ってた。だから颯斗…遅くなったうえに申し訳ないけど、今日は話をする時間がないんだ。ごめん」
いつもより早口にしゃべる綾世は、肩から大きめバックを下げていた。
「え…?あっ!そうだ!」
綾世は急いでいるのか、珍しく慌てた雰囲気なのだけれど、颯斗は面会者のことが気になった。
「綾世さん!あのさ……」
「A-ya!I got you!(あーや!捕まえた!)」
突然颯斗の声を遮り、現れた背の高い男が綾世を後ろから抱きしめた。
「ちょっ!やめてください!!」
その腕から逃れようと綾世が身をよじる。
綾世よりも随分と背が高い、スラリとスマートな外国人。
・・・綾世の面会者?
暗くてよく見えないけれど、日本人と違って彫りが深い顔立ちなのはよくわかる。
綾世と同じく、シルエットでスタイルの良さも。
……でも。
「離せよ!綾世さん嫌がってるじゃん!!」
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