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初めてのこと R18
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ボロいカーテンの隙間から青白い光が細く差し込む。
風が吹く度にそれはさらさらと、まるで水のように流れ、部屋の中にしきりに降り注いだ。
降り注ぎ、汗ばんだ肌を冷やした。
「うぁ……、っは……」
からだの中を圧迫されるような感覚。
こんなに痛くて苦しいなんて、思わなかった。
弱気になって何度も、もう嫌だ、やめようと言いかける度に、オトは、大丈夫だからとおれの口を塞いだ。
ここでやめたらきっと後悔する。
そのことにオトは気付いていたんだと思う。
「っ、くっ……
お……と、オト……っ」
「ん……ミコト、痛い?」
「い、痛い……っ
血……血出てない……?へいき?」
「出てないからへーき。
力入れるから痛いんじゃないの?
ね、深呼吸して」
「う、うん……」
言われた通りに、深く吸って、ゆっくり吐き出す。
緊張が少しだけ解けて楽になった気がした。
「ん、じゃあもう少しだけ、我慢してね……」
「んっ……あ、ぁ……」
少しずつ、おれの中に入ってくる熱が大きくなる。
さっきうんざりする程オトの指に拡げられたはずなのに、入り口は裂けそうなくらい痛くてたまらない。
足を思い切り胸の方へ曲げられているせいで、からだのあちこちが悲鳴をあげていた。
実家で怠けないで、ちゃんと運動しておけば良かったなぁ……
こんなときだというのに、暢気なことを思う。
まだそんな余裕があるんなら、もう少しだけ頑張れるよな。
「……やっと入った」
「へ……?」
「奥まで入ったよ。
どう、キツくない?」
「あ……うん、うん」
「ほんとに?
……じゃあ、ゆっくり動くけど、辛かったら言って?」
「……え、」
え?
え、そんな急に……?
「あ、待っ……う、うぁ」
「ん……そんな締めないでよ、動きづらいでしょ」
「し、知ら、な……
ひっ……あ……っ」
「焦らないでいーから……ね、ミコト」
「っ……オトっ……」
そんなこと言ったって……こんなの、初めてなんだ。
お前は慣れてるのかもしれないけどさ。
セックスって気持ちいいんじゃなかったの?
痛いし苦しいし気持ち悪いし、なんか吐き気までしてきたし。
やっぱり、男同士じゃ無理なんじゃねぇの?
……これで相手がオトじゃなかったら、とっくに逃げ出してるな。
「……ミコト、怖い?」
「……なに……?」
「おれはね……怖いよ。
ミコトを壊しちゃいそうで、怖い……
ほんとは、あんたにそんな顔させたくないのに……」
そう言いながら、オトは恐る恐るおれに手を伸ばし、頬を撫でる。
いつの間にかぼろぼろと零れていた涙を、震える指先で拭った。
「……っ……」
そっか。
オトもおれと同じように、不安で、怖くて、どうしようもないんだ。
そのくらい、おれのこと……大切にしようとしてくれてるのかな。
自惚れても、いいのかな。
「……おれも、怖いよ。
めちゃくちゃ怖い。
……でも、一緒なら……そんなに、怖くないかもしれない」
「……なにそれ。
ミコト、変なの」
「う……」
「でも、そうだね……
一緒なら、怖くないかもね」
「……うん」
「ミコト……」
「……あ、」
オトが上体を折ると、繋がりが深くなる。
そのまま濃厚な口付けを受けて、頭の中が痺れるような感覚がした。
「ん、ふぁ……あ、う……っ」
唇を離すとすぐに、オトは腰を動かし始めた。
さっきより力みが抜けたせいか、オトの昂ぶりが粘膜に擦れるのがありありと伝わってくる。
それから律動は次第に短くなっていき、互いの息遣いも荒くなるのが分かった。
「あ、あぁっ……」
「……っ、ミコト、キツくない?」
「ん、ん……へい、きっ……
んう……く……」
「いーよ、声……出して。
誰も聞いてないから」
「い……いい、やだっ……」
「おれが聞きたいの。
ほら、指噛んだら痛いでしょ」
「あ……」
口元を覆っていた手を剥がされ、ぎゅっと繋がれる。
そのままシーツに押さえ付けられて、身動き取れなくなってしまった。
「っ、……んなの、ずるい」
「おれはミコトの可愛い声が聞きたいだけー。
すぐ気持ち良くなってくるから、ね?」
「……! あっ待……早っ……!
うぁ、あっ」
激しく突き上げられて、一瞬目の前がチカチカと瞬いた。
頭の中が痛いくらい熱い。
どくどくと血管が脈打つ音と、皮膚がぶつかる音ばかりが耳に聞こえた。
声が恥ずかしいとか、痛いだとか、体勢がキツいだとか、おれの理性はあっという間に途切れて、そんなことを考えている余裕もなかった。
「ミコト……っ」
「はっ、はぁ……ぁ、あっ……!」
「は……どうしよ……
すごく、気持ちい……」
「あ、オトっ……オト、オト」
「ん……?」
「オト、あ……ぁっ」
「ミコト……好き。
好きだよ……」
「ッ……
おれ、も……すきっ……好き……」
「ん……あー、もう……
ずるいのは、どっちなんだか……」
「あぁ、あっ……」
腰を動かしながら、オトは何度もおれの首筋や鎖骨に噛み付く。
甘噛みならまだしも、それが中々強めに噛んでくるので、おれのからだはあちこちがじんじん痺れて、感覚が迷子になっていた。
そんなことを咎める余裕もないくらい、意識を保つので精一杯なんだけど。
「っ、あ……ぁっ」
「ミコト……ね、中で出したら、怒る?」
「ふぁ……、な……に? なか……?」
「処理がちょっと面倒くさいからね。
でも……へへ……いーよね。
お説教は、あとでいくらでも聞くから」
「……!」
ふいに最奥を押し上げられ、息が詰まる。
まともに呼吸する間も与えられないまま、オトは容赦なく硬い屹立を繰り返し突き立てた。
「ひ、ぁっ……うぁ……あっ」
視界が揺れて、視線が定まらない。
更に不安定な姿勢のせいで、自分が今どこにいるのか、どんな格好をしているのか、まるで分からなくなっていた。
世界がぐにゃりと歪んで、その中に溶けてしまいそうな錯覚さえ覚える。
怖くなって、おれは助けを求めるように、無意識に手を伸ばしていた。
おれが手を触れる前に、オトの腕が、おれの背中を強く抱き寄せた。
「っ、オト……っ
……うぁっ……あ、あぁ、ぁっ、〜〜ッ……!」
からだの奥に、生温いものがゆっくりと広がる。
それはおれの中の熱とすんなりと交ざり合って、綺麗に解けていった。
その直後、びくびく、と全身が震え、おれは射精した。
「……っは、はぁ……
…………っ……」
震える息を吐くと、今まで自分がちゃんと呼吸出来ていなかったらしいことに気が付く。
慌てて息を吸ったり吐いたりして、呼吸を整えた。
「……大丈夫?」
そっと目を覗き込んで、オトは汗で額に張り付いたおれの前髪をかき上げる。
おれがゆっくりと頷くと、オトは一瞬だけ微笑んで、柔らかなキスをした。
眸を見つめては、また唇を重ねる。
最中の激しさとはまるで違う、穏やかで優しい口付けを交わす内に、痛みで軋むからだが、心地いい疲労感に満たされていく気がした。
いくらかの時が過ぎたあと、オトはおれを抱き締めて肩口に顔をうずめた。
「……ミコト」
「……ん?」
「おれ、なんか……泣きそうだよ。
胸がいっぱいで、我慢してないと、溢れちゃいそう……」
「……うん」
「このまま……閉じ込めておけたらいいのにな。
ミコトも、おれ自身もさ。
腕を離さないでいられたらいい……」
それは、とても気持ちのいいことに思えた。
ずっとこんな風に、片時も離れずに傍にいて、たまに言葉を交わして笑い合ったり、手を繋いだり……
そしてそのまま眠って、一緒に朝を迎える。
そんな日々が送れたら、どんなに幸せだろう。
……けれど、それじゃあ意味がないんだ。
「こういうのは、特別なことのままにしておこう。
その方が……大切に出来るから」
オトの髪を、指先でそっと掬う。
オトは、そうだね、と掠れた声で小さく呟いた。
その声は、泣いているようにも、笑っているようにも聴こえた。
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