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真羅 ~side~
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病院についてから、俺と日下君は別室にすぐ連れて行かれた。
勇間は待合室で警察から事情聴取…
叶が一緒に居るから大丈夫だろうが、精神的にはきっと不安定だ。
早く手当を終わらせて勇間の所に行ってやりたい。
〖結構深いですね…痛みはどのくらいですか?〗
『少しだけ痛いです。』
〖では鎮痛剤をお出し致しますね。〗
『ありがとうございます。』
手当をする看護師と医師に囲まれながら、当たり障りの無い回答をしていく。
内心は勇間の事でいっぱいだ。
〖お大事にどうぞ。〗
『ありがとうございました。』
一礼をしてドアを閉める。
受付を済ませたら勇間の所に……ん?
見覚えのある金髪頭を視界の端に捉え、方向転換をする。
段々近づくにつれて、確信を得る。
『カイト君…だよね?』
〘!〙
相変わらず包帯だらけのカイト君は、俺を見て顔を明るくした。
『速水君は…どうしたのかな?』
〘はぁくん……今は寝てるよ。〙
『寝てる…?何処で…』
〘405号室…〙
『入院しているのか……』
〘うん…僕のせいで…ずっと…〙
『…………。』
速水君が入院…?
結構重体なんじゃ……
カイト君は今にも泣きそうだ…それでも泣かない様に我慢している。
ずっと一人で付き添っていたのか…
『後でそっちに行くよ。』
頭を撫でながらそう言うと、嬉しそうな顔をして一粒だけ涙を流した。
強くなったんだな…
何があったか聞くなんて…そんな野暮な事は今しなくても良いか。
カイト君に一言告げ、俺は勇間の所へ歩を進める。
ノックをすると、叶の返事が聞こえたため静かにドアを開けた。
ベットに横たわる日下君…その傍らに叶と勇間…
二人とも心配そうな表情で日下君を見つめている。
『そんな暗い顔すんなよ二人共、傷は深いつっても死んでないんだ。日下君が起きたとき笑われんぞー。』
[……それもそうだな。俺飲み物買ってくるわ…なんかあったら連絡してくれ。]
『おう。』
叶が病室から出て行き、勇間と俺だけになった。
秒針の音…
医薬品の鼻を刺すような独特の匂い…
横たわる日下君…
ふと、勇間と重なる。
嫌な事を思い出した…顔を少し歪める。
「どうかしました?」
『ん?あ、あぁ…なんでもないよ…』
「………。」
忘れたくても忘れる事ができない悪夢だ…
今、勇間は隣りに居て…しっかりと生きている。
けれどたまに、俺の隣から消えてしまうんじゃないかと不安になる…
「先生…?」
『ん?』
「あの……手…」
『手…?……あ、ごめん!』
無意識に勇間の手を掴んでいた…
「やっぱり…何かありました?」
『………。』
手を離そうとしたが、勇間が強く握った為離せなくなってしまった…
優しい温もりが手に伝わる。
『ん……ちょっと不安で…前に勇間が運ばれた時と似てるなぁって思って…』
「………。」
『ごめんな…』
「…いえ、聞けて良かったです。」
『え?』
「普段先生弱音とか吐かないから…」
そう言って微笑んだ勇間は、また強く俺の手を握った。
「先生…俺は強くなったから…大丈夫ですよ。」
『うん…そうだな…』
「なんてったって、返り討ちに出来ちゃうくらいですから。」
『ふふっ…』
戯けて見せる勇間…
明るくなった勇間…
強くなった勇間…
全部が全部嬉しい事ばかりだ。
〔返り討ちとか……すげぇな…〕
「日下君!」
〔お疲れ様…〕
「日下君こそ……お疲れ様…」
『俺、叶の所行ってくる!』
病室を飛び出し、叶へ電話を掛ける。
ワンコールで出た叶へ日下君がめを醒ましたことを伝える。
すると、すぐに行くと答え電話を切った。
その数秒後、走る音が響き目を向けると叶が息を切らしながら立っていた。
凄く嬉しそうな顔をした叶に思わず笑ってしまう。
『お前…っ…必死だな。』
[当たり前だろ…早く行くぞ。]
『おう。』
今度は走らず、病室へと向かった。
扉を開けた瞬間、叶は日下君へと一直線へ向かい抱き締めた。
[馬鹿野郎…っ]
〔ごめんごめん……大袈裟だなぁかなちゃんは…〕
[うるせぇ…っ…]
〔うん………心配かけてごめんね。〕
[心配なんてしてねぇよクソ餓鬼。]
〔ははっ…〕
鼻声でそれでも素直になれずにいる叶…
それでも日下君にはちゃんと本心が届いている。
そんな二人を俺達は水を差さないように、見つめるしか無かった。
『さて、と…勇間、ちょっと良いか?』
「は、はい。」
勇間を呼び出し、廊下へと出る。
何を言われるのか分からない勇間は、少し挙動不審だ…
それすらも可愛く見える…重症だな、俺。
『ここに来る前にカイト君と会った。』
「えっ…!」
『速水君がどうやら入院しているみたいで、重体なのかずっと眠っているらしい。』
「そ、う…なんですか……でも、生きてて良かったです…」
『…そうだな。で、だ…会いに行くか?』
「……。」
俺の顔見つめたまま動かなくなった。
会ってもいいのか?と言う疑問と、自分が会っても何も出来ないと言う気持ちが交互に押し寄せているのだろう…
『勇間はカイト君の友達だろ?』
「友…達…」
『心配なら会うべきだろ…もちろん、俺も一緒に行くよ。』
「………じゃ、行きます。」
『ん、分かった。』
中へ戻り、叶と日下君に一言告げて病室から出た。
405号室だと言っていた…
エレベーターに乗り込み、その部屋へ向かう。
『………。』
「………。」
沈黙が流れる…
少しだけ雰囲気が重い。
心配している気持ちだけでは無い…なぜ重体なのか…
彼等に何があったのか…
踏み込んで良いラインなのか…
「先生…」
『ん?』
「日下君に…カイト君……何があったんですかね…」
『…それは本人から聞かなきゃ分からない。』
「……。」
『もし日下君がカイト君の為に家へ向かったのなら、警察も交えなきゃな…』
「…っ……はい。」
病室に着き、勇間は深呼吸をした。
弱々しくノックをすると、カイト君が出てきた。
〘ユーマ!〙
「わっ……」
勇間を見て嬉しそうに飛び付いたカイト君…その後ろには様々な線に繋がれた速水君が眠っていた。
痛々しい程、包帯に巻かれている…
『いきなり来てごめんね…入っても良いかな?』
〘うん!〙
恐る恐る足を踏み入れる…
心電図の規則正しい音と、消毒液の匂い……そして血の匂いが強く鼻を刺した。
「………。」
〘はぁくん…ユーマとセンセーが来てくれたよ!〙
起きない速水君に、笑顔で話し掛けているその姿が痛々しい…
思わず視線を外してしまった…が、直ぐに元に戻し俺も速水君に話しかける。
『久しぶりだね…速水君。』
「………。」
『少しだけカイト君に聞いてもいいかな…?』
換気のために開け放たれた窓から、強く風が吹き込んだ。
それを速水君だと都合よく解釈して、カイト君に向き直す。
『カイト君、どうしてこうなったのか…分かる範囲で教えてくれるかな?』
〘う、うん……〙
暗い顔をしたカイト君がソファーに座るのを見届けてから、俺達も腰を下ろした。
また長い日々が始まる予感がする…
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