アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
水の呪い22
-
しかし、さすがの王もこのような戦い方を続けるのには限界があった。表情こそ余裕のある様子を保っているものの、息は上がり、汗がとめどなく溢れてくる。女の連撃を捌き続けたせいか、剣を握る手にも痺れが出始めてきた。
(これでは矢が届くまで保たんか。……潮時だな)
呼吸を落ち着けるように大きく息を吐き出した王が、剣を右脇に構える。そして彼は、朗々たる声を紡ぎ始めた。
「命育む大地よ 命燃やす炎よ 我が声を聞け 我が願いに応えよ 灼熱と堅牢の息吹を以て 我にひとときの力を与えん! ――“炎砂の剣鎧”《ケルパ・ウェイク》!」
詠唱し、王が大地を蹴る。それは、相手の猛攻を捌くことに徹していた王が攻撃に転じた瞬間だった。
これまでよりも遥かに機敏な動きで、王が女の喉元へ刃を突き立てようと剣を繰り出す。それを己の爪で防ごうとした女は、しかし王の剣に触れた瞬間に僅かに眉を顰めた。だがそれも一瞬のことで、やはり力づくで刃を弾いた彼女が、もう片方の爪を王の腹に埋めんと腕を振る。
女の爪は、これまでの王であれば確かに対処しきれない速度で王を襲ったが、彼はそれを躱すでもなく受け流すでもなく、すぐさま翻した剣で受け止めてみせた。
「……へぇ」
にやりと笑った女が、剣に止められた腕に力を込める。空いている方の腕で追撃をしないということは、力比べをするつもりなのだろう。
(っ、これでも、足りんか……!)
両腕で剣を握っているにも関わらず、女の腕ひとつに押され始めた王は僅かに顔を顰めた。そして、両腕に更に力を込めて叫ぶ。
「三倍だ!」
途端、王の膂力が増し、彼は見事に敵の爪を弾き返した。そして、そのまま返す刃で女の腹を狙う。鱗に覆われた箇所に刃が通らないことは判っていたので、鱗がない可能性がある場所を選んだのだ。服の内側がどうなっているかは判らないが、仮に鱗がなければ致命傷になったであろう。しかし渾身の一撃は、女が咄嗟に後ろに跳び退ったため、その腹を浅く切り裂くに終わってしまった。だが、僅かに散った血液を見るに、やはり彼女の鱗が覆える場所には限りがあるようだ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
143 / 216