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黒の暗殺者5
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「少々身体が痺れる程度? あの毒、割と強力な麻痺毒っぽかったけど。実際あんた、もう少し遅かったら呼吸困難になってたんじゃない?」
本当に唐突に聞こえたその声に、少年がびくっと肩を震わせて声の方を仰ぎ見た。その視線の先、少年の正面で腰を下ろしているカリオスのすぐ後ろに、いつの間にか人が立っている。
驚いたことに少年は、声を掛けられるまでその存在を一切認識できなかったようだ。少年の正面という、通常ならば気づかないはずがないような位置に立っているにも関わらず、である。
そのことに驚愕した少年は、その人物の顔を見て更に驚くこととなる。
「ヨ、ヨアン、さん……?」
突然声を掛けてきたのは、さきほど少年を見捨てていなくなったヨアンだったのだ。
少年が驚きを隠せないでいる中、一方のカリオスは、どこか慌てたように身体ごと背後を振り返ると、片膝をついて深く頭を垂れた。
「お見苦しいところをお見せして申し訳ありません。ご助力、深く感謝申し上げます、"ヴェールゴール王陛下"」
畏敬の念と共にカリオスが口にしたその言葉に、少年が目を丸くする。
「…………え? あ、あの……?」
今、カリオスは何と言ったのだろうか。ヴェールゴール王と、そう聞こえた気がする。ヴェールゴールと言えば、リアンジュナイルの東端に位置する小国だ。十二国に宛がわれた色に倣い、黒の国と呼称する人も多い。つまり、ヨアンと名乗ったこの青年は、どうやら黒の王であるらしいのだ。
あまりのことに回らない頭でなんとかそこまで把握した少年は、しかしその現実が受け止められないといった風にヨアンを見上げた。そんな彼に、ヨアンが首を傾げる。
「なに?」
「い、いえ、あ、あの、……国王陛下、で、いらっしゃるの、ですか……?」
恐る恐る紡がれた声に、ヨアンはやはり小首を傾げたあと、あっさりと頷いて肯定してみせた。
「うん。そうだけど、それが?」
ひえっ、という声は、あまりのことに発することさえできなかった。
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