アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
12
-
心配そうな顔をしてくれる峯さんと別れ、運彼の運転する黒いクラウンが見えなくなるまで手を振った。そして、ゆっくりともう一度俺はインターホンに向き直る。
ひとつ深呼吸をしてからその小さなボタンに力を込めると、ピンポンという電子音の後に「はい」と落ち着いた男の声がした。
「あの、島木さんのところから来た…」
「ああ。話は聞いてます。すぐ開けますね」
男は俺が名乗り切る前に通話を切った。どれだけ広い屋敷なのだろう。実家のインターホンが鳴ってからお母さんが出るまでの時間のたっぷり二倍ほどの時間をかけて、ようやく大きな門の向こうで物音が聞こえた。
「ようこそお待ちしておりました。さあ、中へどうぞ」
男が開けてくれた門の向こうには、やっぱり豪華な日本家屋が建っていた。白く細かな砂利の中に敷かれた飛び石が、その玄関へと続いている。
「旦那様は今留守にしておられます。その間あなたの世話を任せられている三國です」
「あっ…よろしくお願いします」
「それではお部屋までご案内します。ついてきて下さい。あ、靴もお持ちになって下さいね」
玄関を抜け、広い廊下をスタスタと歩いていく三國さんの背中を必死に追いかける。綺麗に磨き上げられた床板はツルツルと滑り、慣れていない俺は何度か転びそうになった。
「…わ」
「あそこに見える離れが、あなたがこれから生活することになるお部屋です」
綺麗な庭に面した廊下を進み、俺たちは屋根付きの渡り廊下に靴を履いて降りる。その通路の先には、立派な離れが建っていた。
家の奥とはいえ離れの周りの庭もしっかりと手入れがされていて、青青とした緑が眩しい。
「この離れにはトイレと浴室と簡易キッチンが備え付けられています。他に何か必要なものがあれば言いつけて下さい」
「え、あ、はい」
「食事は三食定刻にお持ちします。食べ終わった食器はここに置いて下さいね」
「はい…」
入り口の鍵を開けながら三國さんは淡々と説明を続ける。どうぞ、と促されるままに足を踏み入れれば、離れと呼ぶには勿体無いくらいな広い造りになっていた。
「夜になれば旦那様がお見えになります。それまではどうぞ自由にしていてください。19時のお食事までは誰も来ないと思いますので」
「わかりました」
「何かありましたらここに電話して下さい。何か欲しい物がある時もここへお願いします」
三國さんはポケットから取り出したメモ用紙を一枚破ると、電話のそばに置いてあったペンで番号を書いた。
「それでは、失礼します…あ、忘れていました。旦那様がいらっしゃるまで、外に出てはいけないそうです。出歩いていいのはその扉の向こうの庭だけだと言われています」
「…はい、わかりました」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
60 / 193