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「…ああ。なあ、オレの本当の名を呼べよ。十年間、アンタをこうして抱く時は絶対に呼ばせたかったんだ。…ほら、イきながら呼べって…っぐ!!」
「ぁあっ!!れつ…っ!!れつぅ…っ!!」
二人はほぼ同時に果てた。…年下の男はあまりの悦びに、深く爪を立てて箱根の背中に引っかき傷を残した。久米の爪に、年上の男の血の色が滲んでいく。
年上の男は喉からややくぐもった低い呻きをあげ、久米の身体の上に覆いかぶさるようにして倒れ込む。
二人の交わりは終わったばかりで、互いに息が荒い。箱根は年下の男の華奢な身体を掻き抱いて、耳元で告げる。
「…アンタ、昨晩言ったよな??オレに抱かれながら、『忘れさせて』って…。」
久米は目尻にうっすらと涙の雫が残る瞳を眇めながら、こくり、と微かに頷いてみせた。
「ありゃ、十年前の記憶を忘れさせろって言っていたんだろ??冗談じゃねぇよ!!…絶対に忘れさせるもんか、ってオレは思っていた。…十年前を忘れられたら、アンタにとってオレは赤の他人になっちまうからな。」
箱根は年下の男の頭を撫でると、相手の目元に唇を寄せ、目尻に光る涙をそっと吸い上げた。
「なあ、頼むから『忘れさせて』なんて二度と口にしないでくれ。オレを傷つけた記憶を、決して忘れないでくれ。更に言えば、もう二度と傷つけないでくれ。他人の命はもちろんだが、アンタ自身の心も命も…大切にして欲しい。…アンタの過ちも十年間の懺悔も、全部含めて、これからのオレがアンタを丸ごと愛するから。」
久米は覚束ない両腕を相手の背に回して、目を瞑って繰り返し頷く。
「うん…っ!!僕はこれから、十年前の自分からはもう逃げない…っ。逃げずに、過去の自分と向き合って生きていく…っ!!」
箱根の分厚い胸板に頬ずりを繰り返す年下の男に、相手はごくりと生唾を飲み込む。
「…にしても、ああ…、畜生。身体の相性がよすぎて、癖になっちまいそうだ。」
ぼやきつつ、箱根が身体を離そうとした矢先。組み敷かれていた久米が、年上の男の背中を両腕でぐいっと引き寄せる。ほっそりとした両脚を蜷局を巻くかの如くくるくると絡め、まだ赤らみが残った表情で久米は告げる。
「…烈、駄目。…まだ、抜かないで。僕の中にいて…。」
「…っう。」
箱根が凛々しい顔を歪めて低く唸る。すると、年下の男のナカにいた箱根の分身がぐんっと大きく膨張した。ややして、ナカの変化を感じ取った久米も小さく叫んだ。
「ぁ…っ!!」
二人して顔を見合わせる。二人の視線が交わった先から、情欲の炎が静かに灯った気がした。
「…身体、大丈夫か??」
箱根の穏やかな声音と相手を案じる細やかな気遣いに、年下の男はとくんと胸を弾ませた。返事の代わりに、久米は相手の大きく喉仏が出た太い首に腕を回しつつ、ぴったりと身体を密着させる。腰を緩く揺らして、ナカの襞全体で箱根の分身を愛撫するように頬張る。箱根の反応は顕著だった。深く低く、雄々しい懊悩の声をあげてから…ガツガツと腰を進めだす。
「…煽ったのは、アンタの方だからな。…ユキ。」
相手に耳元で囁かれ、久米はほうっと恍惚の息を吐いた。
「…れつ。もっと、ちょうだい…っ」
久米の返事を聞き届けた年上の男は、ニヤリと笑ってみせた。箱根は自身の首に絡まっていた年下の男の細い両腕をとると、力任せにシーツに縫い留める。
「…ああ、気が狂うまで奥にたっぷり注いでやるよ。」
十年間ずっと離れていた二人の手は、今やきゅうっと恋人繋ぎに結ばれていた。恋人達が繋いだ腕の先、僅かに開いた障子戸から辛うじて見える窓の向こう、あれほど降り続いた雪はやみ、空には燦々と輝く晴れ間が覗いていた…。
不幸は、音もたてずにやって来る…。
…だけれど、きちんと向き合ってみれば、その正体は幸福に変わるのかもしれない。
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