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夜の帷が下りて随分と経った。
いま、何時なんだろうか
月明かりに照らされたプールはその光を反射させ
俺たちの動きに合わせながら静かに波紋を描く。
そして、星々の小さな輝きをも写していた。
ウミはぷかーっと上手に水面に浮かぶ。
どうやってやってるんだそれ教えろし
なんて言葉にできない俺は器用に水面に寝そべる男を眺めた。
…俺もやってみようかな
意を決して見よう見まねで水面に背を預け、眠る時のように仰向けになる。
俺の想像では俺はこの体勢のままぷかぷかと水面と背中合わせになり優雅に浮かんでいる。
だが実際はというと何故か俺の体は勝手に動いて
次第にはお伽噺の泥舟みたいにぶくぶく沈んでいく。
まあわかってたけどな
水中において沈むことに慣れている俺は焦ることもなく
むしろ水の中ぎひどく心地よく息を止めてそのまま深く潜る。
目は瞑っているから視界は暗い。
けれど、真っ暗というわけではなくて僅かな光を感じる。
水に包まれた体は軽い。
それでも沈んでいく。
なんでだろ、面白いな
俺としてはこれでも気持ちよく泳いでいるのだけれど
体育の授業ではこれだと減点らしい。解せない。
こうして冷静に考えてみると確かに俺の体は沈んでいるだけで前に進めてはいないのだから納得と言えば納得だ。
だんだんと息が続かなくなってきて
そそろ水面にあがろうと手を伸ばした時
「融ッ」
まだ水の中にいる俺には届くはずないのに聴こえた気がした。
そう思った瞬間、腕を力いっぱいそれこそ今の俺の手首には痕がついてるんじゃないかってくらい強い力で掴まれ引かれる。
空気と水がぶつかり合う音
水の中に飛び込んだ時とは違う音
ぷはっ、と止めていた息を吸うため結んだ口を解く。
両手で顔を擦って水を払う。
と、
「大丈夫か…?」
心配そうな声に首を傾げた。
「…?なにが?」
「は?」
「え?」
眉間にこれでもかと皺を寄せていたウミに俺はもう一度首を傾げる。
なに、ウミ、なんでそんな顔してんの?
「溺れてたよな?」
「え?泳いでただけだけど」
「は?」
「え?」
さっきと全く同じ声に俺も同じように返してしまう。
顔を見合わせて数秒
わけがわからないと言う顔をした俺に
ウミは硬らせていた体を解して口元を綻ばせた。
そして、
「ふっ、ははっおまっ、ははっ」
ウミは突然、文字通り腹を抱えて笑い出した。
いつもだったらバカにすんな!とか
笑うな!とか喚いていたと思う。
けれど、そんな言葉が出てこないくらい
その笑顔に見惚れていた。
正直、連れてきてくれたウミには絶対言えないけど
この日見た綺麗な夜空よりも
今この時のウミの笑顔の方が
俺にはずっと、もっと輝いて見えていた。
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