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沈んだ気分の中、アパートのエントランス前に着く。
郵便受けを確認すると、珍しく中には新聞とチラシの束が窮屈そうに詰められていた。
それらを片手に抱え、階段へと向かう。
丁度その時、階段上の照明に灯りがついた。
もう5時か。
日が沈むのが早くなってきたこの頃
7月頃は17時を過ぎてやっと日が傾き始めるくらいだったというのに階段の踊り場の向こうに見えた夕日はもう殆ど沈みかけていた。
たんたんと靴裏を鳴らして階段を上がっていく。
いつもはエレベーターを使うのに、階段を選んだのは無意識の中に何かを察していたからかもしれない。
やっと目的の階に着いたと思ったのに俺は足を止めた。
「なんで、」
俺の住むマンションは横並びの形になっており一番端に階段がある。
階段を上がればそのフロアの廊下は丸見えという作りをしていた。
廊下を真っ直ぐ手前から三つ目
それが俺の家の扉がある場所
今は会いたくないと思っていたのに
「…」
「ウミ……」
扉の横にウミがいた。
その場にしゃがんでスマホをいじっているようだ。
ウミは俺に気がついているのかいないのか
スマホから視線を逸らすことはなかった。
気まずさを覚える俺は、ウミの前まで来ても何も言葉は出てこなくてそのままドアノブに手をかけた。
と、
「あれ?」
ガチャンと音がして、開くはずの扉は大きな音を立てるだけで開かなかった。
今日は母さん仕事じゃないし、いるはずなんだけど…
「お前、やっぱメッセージ見てねーな」
「え?」
そう零すウミの方に視線を向けるが、依然ウミはこちらを見ていなかった。
カバンの中からスマホを取り出して画面に触れてみる。
俺のスマホは電源がついていないのかうんともすんとも言わない。
そういえば、と記憶を辿る。
ウミから連絡があったことに驚いて電話を切った後電源まで落としてしまったような…
「あー、なんかあった?」
「……帰り、下で丁度おばさんとあって急遽仕事行くことになったから今日は俺んとこで済ませろだと」
「まじ?」
お前既読もつけねえから、と愚痴を零すウミ
それは悪いことをしたなと思うと同時に腑に落ちた。
だからウミは連絡してきたのか。
まあ、そうだよな。
用事もなく連絡してくるあんて、やっぱあり得ないもんな
「悪かったよ、ちょっと友達といたから」
「…」
「あーっと、じゃあ夜行くからさ!制服とか、着替えたいし?まだ日も落ちてないから大丈夫だからさ!な?」
普段制服を着ている着ていないがウミの家に行くことと全く関係ないことをウミもわかっている。
言い訳みたいに言葉がたくさん出てきて
俺は何を言っているのだろうと頭の片隅で思う。
ただ、避けていた手前ウミと二人の時間を減らしたかった。
それがなくともよくない考えばかりが頭に浮かんで
自分でも意味がわからないことになっているというのに
こんな状況全くもって求めていない。
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